研究課題/領域番号 |
25461758
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
土屋 賢治 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 准教授 (20362189)
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研究分担者 |
鈴木 勝昭 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (00285040)
松崎 秀夫 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (00334970)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム / 注視点 / 診断指標 / 重症度指標 |
研究実績の概要 |
乳幼児の神経発達を客観的に評価する注視点分布計測装置「GazeFinder」を用いて、自閉症スペクトラム(以下、ASD)の有無およびその重症度を反映する理学的所見の収集をおこなった。代表者らは5種類(ヒトの顔動画、選好動画、窓画動画、点画動画、共同注視動画)、68パターンの視覚刺激動画を準備し、「ターゲット領域」「代替ターゲット領域」を設定して、それぞれの領域に分布する注視点の個数の割合(注視率%)を計測することとした。 1歳9ヶ月~3歳0か月の子ども49名を被検者として、およそ3ヶ月の間隔をあけて2度にわたり注視点分布計測を行った。各領域に対する注視率を計算し、2回の計測間のintraclass correlation (ICC) 値を求めたところ、26個の注視率のICCが0.4以上の優れた信頼性を示した。 ついで1歳6ヶ月~2歳0か月の子ども494名(うち男児250名)に注視点分布計測を行うとともに、ASDのスクリーニング尺度M-CHATを同時に施行した。上記において0.4以上のICCを示した26個の注視率指標とM-CHAT合計得点との相関を評価したところ、8つの注視率指標がM-CHAT合計得点と統計学的に有意な相関を示した。 上記の8つの注視点指標を使い、診断予測アルゴリズムの作成を試みた。446名の1歳6カ月~2歳6カ月児(うちASD36名、non-ASD410名)を対象にGazeFinderを施行し、アルゴリズム診断と実際の臨床診断の整合性を検討したところ、ASD臨床診断への感度は78%、特異度は88%であった。 ICCが0.4を下回る各指標のうち、選好動画から得られる9個の注視率指標、共同注視動画から得られる1個の注視率指標において、M-CHAT合計得点と強い相関が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象者の収集がスムーズに行われた。今回の解析対象者は、2013年8月~2015年1月までの間に次のいずれかに参加した子どものうち、その保護者に対して文書を用いて口頭で説明を行い、かつ代諾者としてのその保護者から書面にて同意を得たものである(佐賀県佐賀市1歳6ヶ月健診、佐賀市「ほっとカフェ」、名古屋学芸大学子どもケアセンター「うさぎ教室」「ぺんぎん教室」、大阪府下4市町村1歳6ヶ月健診)。 結果から、GazeFinderを用いたASD診断予測の精度が極めて高いことが明らかとなった。また、試験・再試験信頼性の検討におけるICCが0.4を下回る各指標において、M-CHATとの関連を調べたところ、選好動画で9パターン、共同注視動画で1パターンに対して、M-CHAT合計得点と強い相関が得られた。このことは、発達の推移や行動特性の変化とともにうつりかわるASDの行動特性を、これらの10パターンから得られる注視点分布指標が適切にとらえている可能性を示唆している。今後さらにデータを収集し、重症度指標の抽出・確定を目論める状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
ADHDについて、26年度さらに200例以上のデータ収集を行った。これにより、約500名分の注視点分布データとADHD-RS(ADHD評価尺度)との臨床的関連を直ちに解析できる状況にある。平成27年度はこの解析に力点を置く。 なお、27年度においても浜松母と子の出生コホートの研究プラットフォームを活用して、さらに対象者数を増やせる状況にある。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象者の募集が順調に進んだ一方、解析・集計にかかる費用が予定を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度には解析・集計に一層の時間と労力を投入する必要があるため、今年度の余剰金額12,583円は確実に使用を見込むことができる。
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