研究実績の概要 |
本研究は、大学生における不眠と睡眠不足の実態を明らかにすることを目的として、新入生を除く学部生、大学院生等において大規模調査を行つた。分析の対象は、健康診断とWeb上の問診に回答した15211名のうち、欠損値の少ない14971名(男性10293名、女性4678名、平均年齢22.7歳)とした。 対象者のうち、0時以前に眠っている学生は20.8%であり、学年が進むにつれてその割合が減少する傾向がみられた。一方、学年が進むにつれて、起床時刻が後退し、睡眠時間が長くなった。 「眠れていない」と回答した学生のうち、「眠れないため日常生活に支障をきたしている」と答えた学生は、172名(1.1%)であった。不眠症状を従属変数、年齢、性別、BMI、生活形態、サークル、食習慣、運動習慣、飲酒、喫煙などを独立変数としたロジスティック回帰分析を行った結果、不眠症状は、入寮していること(Odds ratio = 2.28, P = 0.015)、朝食欠食、(Odds ratio = 1.66, P = 0.038)、喫煙(Odds ratio = 2.04, P = 0.005)と関連し、体育会系サークルの学生は文化系の学生に比べて不眠症状をもつ確率が低かった(Odds ratio = 0.45, P = 0.008)。 休日と平日の睡眠時間差(睡眠負債)を睡眠不足の指標として睡眠生活習慣との関連を調べたところ、睡眠負債は平日の就寝時刻と正の相関があり(ρ = 0.23, P < 0.001)、生活の夜型化と関連していることが明らかになった。また、睡眠負債が大きい学生(≧4h)では「睡眠での十分な休養がとれない」との回答が有意に高かった(χ2 = 403.1, P < 0.001)。よって、休日と平日の睡眠時間差は睡眠不足・過覚醒の客観的指標として有用であることが明らかになった。
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