研究課題/領域番号 |
25461766
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
児玉 高志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員(常勤) (30512131)
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研究分担者 |
田上 真次 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40362735)
大河内 正康 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90335357)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / アルツハイマー病 / 脳脊髄液 / 質量分析 |
研究概要 |
Amyloid beta産生機構の変化に伴って量が変動する分子群を、ヒト脳脊髄液中でLC/MS/MS型質量分析装置による測定で同定、定量するため、測定方法について検討を重ねた。まず、ヒト脳脊髄液中に多量に存在してLC/MS/MS型質量分析装置による測定の感度と正確さの妨げとなるアルブミンなどの分子量の大きなタンパク質を除去する方法を検討した。その結果、限外ろ過フィルターは試料の損失が無視できず、結果の定量性にも影響があることが分かり、アフィニティー樹脂やゲル濾過による分子量の分画を行うことにした。分子量5000以下の分子を分取し、IDA(Information Dependent. Acquisition)測定によりどのような分子種が測定されるか調べたところ、このような前処理を施した後のヒト脳脊髄液でも様々な分子量の非常に多くの分子が存在することが分かった。そこで、さらに分子量700以下の分子を除き、ヒト脳脊髄液中に存在する分子量700-5000の因子を中心にLC/MS/MS型質量分析装置による測定を行った。この結果をもとに、タンパク質データーベース(UniProt)を用いた検索を行い、ヒト脳脊髄液中に400種類を超えるペプチドを同定した。また、同定されたペプチドが、膜タンパク質に由来するものかどうかを検索し、予想される膜貫通部位との関係などを表示するコンピュータープログラムを作成し、同定されたペプチドについて検討を加えた。その結果、同定された400種類を超えるペプチドのうち、121種類は膜タンパク質に由来するペプチド断片で、さらにそのうちの27種類のペプチドはI型膜タンパク質に由来するものであることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト脳脊髄液中に存在する因子をLC/MS/MS型質量分析装置による測定で同定、定量するため、測定の感度と正確さの妨げとなるアルブミンなどの分子量の大きなタンパク質を除去する方法を検討し、実際に分子量700から5000の範囲の400種類以上のペプチドを同定した。また、これらの中には膜タンパク質に由来するペプチドも存在していた。一方、ヒト脳脊髄液中には予想をはるかに超えた多数の分子群が存在することが明らかになり、これらのペプチドに由来するシグナルは、測定の際のLCのグラジエント条件を工夫しても完全に分離することが困難で、それぞれのシグナルが相互に重なり合うようにして観測されることがわかった。したがって、これらのペプチドのヒト脳脊髄液中での存在量について正確に定量して比較するためには、ヒト脳脊髄液をさらに精製するなどしてシグナルを分離する工夫が必要であることもわかった。また、シグナルを分離してペプチドを正確に定量するのに必要な条件を検討して参考にできるように、培養細胞や培養上清を用いた系でも、質量分析による実験系を構築し、実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ヒト脳脊髄液中に存在する様々な因子の同定と定量のための条件の検討を続ける。ヒト脳脊髄液をさらに精製する方法として、ゲル濾過以外のカラムによる方法も検討する。また、培養細胞や培養上清を用いた系から、精製や測定条件に関する情報が得られた場合はそれも利用することを検討する。また、分子量700以下の分子群のLC/MS/MS型質量分析装置による測定の条件も検討して、その同定や定量の際の問題点を明確にして、正確な定量を可能にする方法を検討する。特に、低分子量領域での測定では、ペプチド以外に脂質などの他の低分子化合物も多く存在していることが予想されるので、その扱いについては、新たに検討する必要があるだろうと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額が異なった。 研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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