研究課題/領域番号 |
25461767
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩瀬 真生 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60362711)
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研究分担者 |
石井 良平 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40372619)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 単発・二連発磁気刺激 / GABA / 統合失調症 / 電気けいれん療法 / てんかん |
研究実績の概要 |
二連発磁気刺激では刺激パラメータを調整することで、大脳皮質の抑制・促通現象が誘導されるが、これらの現象は脳内GABA系の機能と関連することが、薬物投与下の磁気刺激研究で実証されている。精神神経疾患において、反復的磁気刺激はうつ病への治療が米国では認可されているが、国内外で単発・二連発磁気刺激の検査法としての臨床応用例はいまだ存在しない。 統合失調症ではGABA系に異常があることが明らかになりつつある。電気けいれん療法の効果発現機序はいまだ謎であるが、治療経過中にけいれん閾値が上昇するため、GABA系の変化も想定されている。向精神薬の皮質興奮性への影響は膨大な数の薬剤で調査されているが、近年上梓された薬剤については検討はされていない。抗てんかん薬においても状況は同様である。またてんかん症候群により皮質興奮性がどのように異なるかは、重要な課題であるといえる。 しかし、精神神経患者へ磁気刺激を検査として導入していくにあたり、検査時間の短縮など検査の簡略化は大きな課題である。健常者において検査の簡略化に関する検討を行い、複数の検査を効率よくできるようになり、現在、患者への応用を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的として以下の項目を挙げている。1)統合失調症におけるGABA系の機能変化、皮質興奮性を検討し、遺伝子解析、機能・携帯画像、認知・生理機能、臨床症状との関連を明らかにする。2)電気けいれん療法の治療効果やけいれん閾値変化との関連を検討する。3)近年上梓された向精神薬、抗てんかん薬のGABA系や皮質興奮性への影響を検討する。4)てんかん症候群別によるGABA系機能や皮質興奮性の差異を検討し、鑑別診断への応用可能性を検討する。5)iNPHにおいて髄液排除試験前後でのGABAニューロンの機能変化、皮質興奮性変化を検討し、治療効果との関連を検討する。本年度は複数の単発・二連発磁気刺激検査の簡略化を行っており、患者への応用可能性が広がる結果となった。単一の検査で得られる情報は限られるため、複数の検査で手順の簡略化に時間がかかり、やや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初のプロトコールに従い、研究を遂行していく。健常者、統合失調症、気分障害、電気けいれん療法施行者、iNPH、てんかん患者を対象とする。 検査機材としてMagstim 200スクエア、8の字コイルを使用し優位半球の一次運動野に検査刺激を与える。バイスティムトレーサー・ソフトウェアにて刺激条件をコントロールする。検査パラメータとしては、刺激部位と対側手の第一背側骨間筋(FDI)より筋電図を記録し、以下のパラメータを算出する。運動閾値(motor threshold; MT)、Cortical silent period (CSP)、Short-interval intracortical inhibition (SICI)、Intracortical facilitation (ICF)、Long-interval intracortical inhibition (LICI) 治療前後、髄液排除試験前後で磁気刺激検査を行う。臨床評価として、生理機能検査、認知機能検査、症状評価を行い、磁気刺激検査パラメータと臨床評価との関連を検討していく。 安全対策として単発・二連発刺激は安全性が確立しているが、日本臨床神経生理学会の推奨する基準を超えないように、検査刺激の間隔が2秒以上となるよう、また一週間の刺激回数が合計5,000回を越えないように安全性に配慮して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度はデータ解析ソフトウェアの購入で予算の大半を使用したため、他にまとまった支出を行うことができなかったため、差額を次年度に使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、被験者の測定の謝金、国内・海外学会への発表、論文執筆への使用を計画している。
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