自閉症スペクトラム障害(ASD) 病像の多彩さは、ASD病態・病因理解を遅らせている。しかし、ASD病像の多彩さは、ASD 3主徴(対人相互作用障害、コミュニケーション能力障害、常同性)各々の「有無」だけで捉えられてきたことによる。近年の研究により、3主徴とは異なる「3独立症状」の「重症度」によって記述すると、ASD病像を正確に把握できることが示唆された。つまり、重症度が独立に変動する3症状の重症度によって、病像が適切に理解できるのである。かくて、本研究では、3独立症状各々の重症度に特異的に関与する生化学的因子を明らかにし、その脳への作用機序を解明することによって、ASDの病態・病因解明、ひいては、ASD病像の正確な類型を目指す。 本研究で実施する縦断研究に関しては、バースコホート集団を対象としたASD症状重症度評価、及び、生体試料採取と終了している。現在、生体試料(神経伝達物質の機能に影響を与えることが明らかにされている遺伝子一塩基・縦列反復多型、メチル化、ホルモン(コルチゾール、テストステロン、エストロゲン等)解析)及び、生体試料をASD症状様行動傾向の乳児期発現との関連性解析を進めている段階である。 一方、横断研究においては、すでにASD児を対象に、質問紙による症状重症度評価と遺伝子多型解析を併用し、各ASD症状(対人相互作用障害、コミュニケーション能力障害、常同性)に特異的に関連する遺伝子一塩基多型を解明している。
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