研究課題/領域番号 |
25461775
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
浄土 英一 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (50211975)
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研究分担者 |
鈴木 喜明 福島県立医科大学, 医学部, 研究員 (80423797)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 前頭前皮質 / 注意転換課題 / ユニット記録 / フェンサイクリジン / 統合失調症動物モデル / ラット / PET |
研究実績の概要 |
26年度は前年度開発した電気生理学的ニューロン活動記録に適した注意セット転換(attention set-shifting; ASS)機能計測システムをさらに改良することと、このシステムを利用して、統合失調症の代表的な薬理学的動物モデルであるフェンサイクリジン(PCP)慢性投与ラットにおける注意転換障害に関わる神経機構の検討を研究目標とした。ASS計測システムの改良については、ラットの行動における個体差に応じた細かな強化スケジュール管理を可能にする制御ソフトウエア開発を行い、この結果、注意転換時の初回記録が訓練開始から安定して10日以内で実施できるようになった。今回の技術的改良で従来の方法より短期間で計測可能なシステムを完成させることができた。しかしながら、PCP慢性投与ラットにおける計測においては、少なくとも今回のPCP投与法(10mg/kg, i.p., 10回)で疾患モデルラットにおいて一貫した注意転換障害が認められなかった。そこで、今回の投与法によるPCP慢性投与ラットの全般的な前頭前皮質活動レベルを検証するため、 [18F]FDG-PETを用いて前頭前皮質における糖代謝を測定した。この結果、PCP慢性投与ラットの前頭前皮質糖代謝レベルは統制群である生理食塩水投与ラットの糖代謝レベルと有意な差異が認められなかった。今回用いたPCP慢性投与法は統合失調症動物モデルを作成する際によく用いられる方法であるが、安定した統合失調症様の認知障害を引き起こす手法としては不適切と考えられる。よって、より信頼性の高いPCP慢性投与モデル作成法を開発することが急務である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年度の研究で、我々は従来の研究でしばしば用いられてきたPCP慢性投与法を用いて、統合失調症モデルラットの作成を試みたが、統合失調症患者で障害が認められている注意構え転換(ASS)課題で一貫した障害を再現することができなかった。PETを用いた前頭前皮質の糖代謝レベル測定においても、PCP慢性投与群に有意な代謝レベルの変化が認められず、少なくとも今回用いた慢性投与モデル作成法が、安定した注意転換障害を引き起こすモデル動物作成法として不適切なものと考えられる。ASS課題で注意転換障害が安定して生じる統合失調症モデル動物を用いて電気生理学的計測を実施するというのが、本研究計画の大前提であるが、残念ながらこの前提を確立できていない。
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今後の研究の推進方策 |
新たなPCP反復投与法を開発し、注意転換障害が安定して生じるような信頼性の高いPCP慢性投与動物モデルを確立することが、今年度研究の第1優先課題である。これに関しては、投与量、投与回数、断薬期間等の改良で改善される可能性が高いことを予備実験で把握しているので、今期の前半で解決できそうである。信頼性の高い認知障害モデルラットの確立と並行して、モデル動物における電気生理学的ニューロン活動記録を実施し、可能な限り研究の遅れを挽回したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度に実施した注意転換(ASS)課題計測において、モデル動物として使用したPCP慢性投与ラットが一貫した注意転換障害を示さないことが判明したため、より信頼性の高いモデル動物の作成法を探索しなければならなくなった。このため、実験動物および微小電極の使用量が当初予定より大幅に減少することになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度からの繰越金と本年度予算は、主に実験動物、微小電極、試薬等の消耗品購入費用として使用予定である。
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