研究課題/領域番号 |
25461776
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
中村 元昭 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (50464532)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経頭蓋磁気刺激法 / 前頭前野 / 神経可塑性 / 広汎性発達障害 |
研究概要 |
平成25年4月以降は、TMS(経頭蓋磁気刺激法)と脳波を組み合わせた実験(TMS-EEG実験)を継続し、健常被験者の実験を実施した。シータバースト刺激(TBS)の前後でTMS誘発電位を測定したところ、N100、P180などの成分の振幅の経時的変化をとらえることができた。この予備的結果は「TMS誘発電位」が前頭連合野の興奮特性や可塑性を反映するバイオマーカーとしての可能性を示唆した。その一方で方法論上の課題も明らかとなり、種々のTMS関連アーティファクトの除去が不十分であることと、被験者負担が大きいことなどが重要課題であった。平成25年9月以降は、TMS-EEG実験に特化した実験環境を追求し、ANT社製のDC脳波アンプ(ASA-lab)と64ch脳波キャップ(Waveguard)を用いた予備実験を重ねた。新しい実験システムと研究プロトコールによって、TMSアーティファクトの混入が劇的に低減され、TMS誘発電位の超早期成分(N45など)の解析が可能となった。これまでは5時間以上かかっていた実験時間も3時間以内に短縮した。新規プロトコールを用いて、本報告書作成時点までに健常被験者計17名のデータを取得した。データの予備的解析を行い、次の2点が明らかとなった。1)TBS前後でTMS誘発電位を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、N45成分の振幅においてTBSによる増幅効果が40分程度確認された。2)TBS前後で認知機能課題を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、TBSによる作動記憶課題の増強効果が40分程度確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技術的に困難であるとされるTMS-EEG実験と解析技法を概ね確立できたことの意義は大きい。また、健常被験者のデータを予備的に解析することによって、TMS誘発電位が神経可塑性を反映するバイオマーカーとして有用である可能性が示唆され、研究仮説を裏付けることができた。
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今後の研究の推進方策 |
・平成26年度中にTMS-fMRI実験のプロトコールと解析手法を確立する(研究目的2)。昭和大学附属烏山病院では、平成26年5月に研究用3テスラMRI装置が新規に設置され、TMS専用のヘッドコイルも導入されることになっている。 ・平成26年度前半において、広汎性発達障害患者のリクルート体制構築を実施する。主に昭和大学の発達障害医療研究センターの発達障害専門外来からの被験者が中心となり、TMS-EEG実験のデータを蓄積する(研究目的4)。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、経頭蓋直流電流刺激(tDCS)装置(約210万円)を購入予定であった。しかし、当該研究費の単年度額を超えていたことと、同装置は申請者が所属する他機関から借用できたことで、購入しないこととなり次年度使用額が生じることとなった。 TMS-fMRI実験におけるMRIデータのS/N比をチェックしたり、他施設のMRIデータとの比較を行う際に必要となる特製のMRI用ファントムを新たに購入予定として検討を進めている。
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