研究課題/領域番号 |
25461777
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
松川 則之 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20305543)
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研究分担者 |
赤津 裕康 医療法人さわらび会福祉村病院長寿医学研究所, 長寿医学研究所, 研究員 (00399734)
井之上 浩一 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (30339519)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | HCNP前駆体 / リン酸化 / 顆粒空胞変性 / 平野小体 |
研究実績の概要 |
25年度までにアルツハイマー病脳内において、リン酸化HCNP前駆体タンパクが顆粒空胞変性内に存在すること、リン酸化HCNP前駆体蛋白が顆粒空胞変性内にてp62と共存し、ユビキチン化選択性オートファゴゾーム形成に関連している可能性を明らかにした。 26年度以降の目標として、アルツハイマー病病態への関与を検討するためにアルツハイマー病脳内におけるリン酸化HCNP前駆体量を非アルツハイマー病脳と比較検討した。その結果、免疫組織学的検討では海馬・側頭葉神経にリン酸化HCNP抗体が認識する物質が顆粒空胞変性とは異なる形態で、凝集体様に蓄積していることが確認された。又、免疫組織学的検討および質量分析法によって、アルツハイマー病脳内において著明にリン酸化HCNP前駆体タンパクが増加していることが明らかとなった。 我々の結果からは、リン酸化HCNP前駆体蛋白がアルツハイマー病脳内において顆粒空胞変性内沈着以外に、何らかの凝集体形成過程に関与している可能性が示唆される。今後、その凝集体内に存在する他の構成成分を明らかにすることにより、リン酸化HCNP前駆体蛋白のアルツハイマー病病態への関与の新たなメカニズムが明らかになる可能性がある。 もうひとつの目標であるHCNP前駆体蛋白平野小体形成過程における役割の解析について、HCNP前駆体蛋白とβチューブリンが結合することを確認した。しかしないがら、生物物理学的相互作用解析法を用いた検討では、その条件設定が安定しない状態である。今後、方法を変更し更に検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標として①HCNP前駆体(HCNPpp)およびtubulinが凝集し、平野小体様構造を惹起すること②リン酸化HCNP前駆体が、オートファゴゾーム形成過程のどの段階に関与しているか③HCNP前駆体のリン酸化の病的意義を挙げた。これまでに②については顆粒空胞内にてp62と共存し、ユビキチン化選択性オートファゴゾーム形成に関与している可能性を示すことができた。また、③についても免疫組織学的・質量分析的にリン酸化HCNP前駆体蛋白がアルツハイマー病海馬および側頭葉に顆粒空胞変性のみならず凝集体を形成しながら著明に増加していることが明らかにできた。現在、①について新たな方法を用いて検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
HCNP前駆体蛋白平野小体形成過程における役割の解析について、生物物理学的相互作用解析法を用いて検討しているが、その条件設定が安定しない状態である。本研究では蛋白合成手技の問題から186アミノ酸の総全長の前駆体タンパクではなく、動物種を越えてcRaf/MEKなど蛋白結合部位と予測される45アミノ酸からなる合成ペプチドおよびα/βチューブリンを用いて実験を行っていることが問題である可能性が考えられる。本年度は同部位のリン酸化HCNP前駆体ペプチドを用いて検討したい。今後はリコンビナントに総全長HCNP前駆体蛋白(もしくは総全長偽リン酸化HCNP前駆体)を用いた結合実験を行う必要があるかも知れない。 更には、アルツハイマー病脳内のリン酸化HCNP前駆体が顆粒空胞変性以外に凝集体を形成している可能性が明らかになった。この凝集体形成の構成成分を明らかにすることによって、アルツハイマー病病態へのリン酸化HCNP前駆体の関与が明らかになる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通り実験は遂行できている状態であるが、会計上消耗品費の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度には、残額に加えて予算費用を使用して計画に基づいて予定通り研究を遂行する。
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