研究課題/領域番号 |
25461781
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
大塚 耕太郎 岩手医科大学, 医学部, 講師 (00337156)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会精神医学 / 地域保健 / 健康教育 / e-ラーニング / 遠隔教育 / 災害精神医学 |
研究概要 |
平成25年度は、オーストラリアで既に実践されている早期介入の基盤プログラム、Mental Health First Aidの地域展開モデルを開発した。また、内閣府のゲートキーパー養成研修テキスト第3版を監修し、既に開発されたDVD視覚教材と対応させた。同プログラムは内閣府自殺対策推進室のホームページより視覚教材が視聴可能であり、テキストのダウンロードも可能となっており、更にQ&Aも設定されe-learningの基盤体制が整備されている。 普及体制の構築を視野に入れたパイロット研修として、島根県では2013年11月にMHFAインストラクター研修(4疾患)を実施し、その後、島根県内でうつ病・自殺、アルコールに関するデモ研修を行った。更に雲南圏域ではMHFA研修を行った。同様に相模原市では、MHFAトレーナー研修、一般向けのMHFA研修を実施し、前年度の取り組み成果について第72回日本公衆衛生学会で発表した。加えて、地区単位の研修としてMHFAを活用し精神保健福祉系事業所の従事者を対象に、うつ、自殺に関するMHFA研修を行った。更に研修修了者のトレーナー登録システムを開始した。 被災地である岩手県においてもゲートキーパー養成プログラムとして、地域住民、精神保健従事者、勤労者等へ本プログラムを提供し支援をした。また、岩手県こころのケアセンターにおける地域支援学講座プログラムへ本プログラムを提供し全県の従事者へのトレーナー研修を実施した。また、被災地への派遣医師への教育プログラムとしても本プログラムを活用した。また、第37回日本自殺予防学会の学会企画研修でも本プログラムが活用された。 今後は研修システムの運用、プログラムの提供領域拡大、研修内容の充実化を視野に入れて、オーストラリアとの連携体制も強化していくことが求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プログラムの基盤は既に策定され、本研究班が監修した内閣府のゲートキーパー研修テキストは第3版として全国へ提供された。このプログラムは自殺対策として内閣府自殺対策推進室のホームページより視覚教材は視聴が可能であり、テキストはダウンロードが可能となっており、e-learningの基盤体制が整備された。加えて、領域として介護領域、がんなど重傷身体疾患領域、児童領域などさまざまな領域が視野に入れられており、地域での5疾患5事業が展開された時にも活用が期待される。 また、地域で展開する各自治体の精神保健福祉センターの協力を得ながら研修プログラムを開発しており、保健師・心理職が研修を担当し、シナリオを読み合わせるだけでなく方言を用いた寸劇、「りはあさる」項目のチェックを行う形で地域で活用出来るモデルを開発し現場では好評であった。ここで作成したシナリオ、チェックリスト等のツールは他地域でも活用できるモデルであり、地域、民間人の実施につなげるやり方は、都道府県での普及モデルになると考えられた。更に研修を修了したインストラクターをトレーナー登録するシステムを開始し、全国展開する上でのプログラム提供の質の確保を行った。 本プログラムは被災地における住民だけでなく実務者や勤労者の教育にも活用された。被災地においては災害復興において今後もこころのケアの重要度が高く、本プログラムは被災地のメンタルヘルス対策への貢献も高かった。
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今後の研究の推進方策 |
1.地域展開プログラムについては、参加型の研修スタイルが好評であり今後研修時間やその内容を充実化させ、併せてファシリテーターの教育法についても開発する。また、慢性期統合失調症、アルコール一般編、児童の自傷・親、周りの大人の対応、傾聴スキルについての視覚教材と教育プログラムの開発を行うことを予定している。なお、不安障害の教育プログラム等、医療モデルとの整合性についてはこれまでも救急医療の教育プログラムとの整合性を図っており今後も本プログラムの適応範囲や他プログラムとの整合性や独自性を検討しながら推進していく必要性がある。 2.精神保健従事者のコアカリキュラムとしての利用を可能にするため、関係者との協議や調査を行いニーズを把握しながらプログラムの教育目標やファシリテーターの教育方法を確立させていく。 3.これまで研修プログラムを提供していた地域からプログラムについてのフィードバックを得ながら、更なるプログラムの充実化を行っていく。 4.本プログラムの全国展開モデルとしてホームページ等WEB活用の推進体制強化を予定している。 5.パイロットモデルとして地域の精神保健福祉センターや関係機関と協力し、プログラム開発の効果検証を行っていく。また、オーストラリア・メルボルンにてMHFAプログラム開発者であるJorm先生の研修を1週間にわたり受講し、日本での展開について検討の上、国際的連携体制を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
webの整備について当初の計画よりも時間がかかり、e-ラーニングによる研修等の提供が十分に出来なかったため。(一方で本プログラムの一部は内閣府のホームページから提供されているためその点で新たな予算が計上されずに全国展開を進めることが可能となった。) 次年度は、webの整備を進め、疾病別、受講対象者別等カテゴリをより細かく分けて教材を提供することで現場ですぐに活用できる様、研修内容の改訂、動画の撮影し直し等、教材のパッケージ化を完成させる予定である。また、オーストラリアでの研修と国際的連携体制の構築も目的となっていることから事業規模が拡大するため、次年度使用額についても有効に活用していきたい。
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