研究課題
背景と目的:アルツハイマー病で出現頻度の高い妄想や興奮、易刺激性などの精神症状は、介護への大きな障壁となり、認知症の進行を促進する要因ともなる。したがって、これらの精神症状の出現前後の脳画像の変化と臨床経過の縦断的な変化を統合した検討は重要な課題である。そこで、本研究ではアルツハイマー病患者で妄想や興奮などの精神症状が出現した前後の縦断的な変化を1 頭部MRIによる脳形態画像と拡散テンソル画像2 認知症患者の生活の質(quality of life :QOL)や前頭葉機能などの評価3 若年期認知症と晩発性認知症の差異 以上の観点から複合的に検討するのが目的である。方法:妄想、幻覚、興奮や易刺激性などの精神症状を併発していない軽度アルツハイマー病患者を5年間追跡し(平成22年度からの縦断研究の継続)、2. 経過中にNeuropsychiatry Inventory (NPI)において、妄想が出現した患者と出現しなかった患者の2群にわけて、3. ベースライン時点での頭部MRIの縦断的変化をVBM法とDTIなどにより灰白質体積および白質線維構造の異常 および4. QOLや前頭葉機能の変化などを統合的に比較検討する。 新たに平成25年度から 精神症状を併発していない軽度アルツハイマー病患者の若年性認知症と晩発性認知症も、上記と同じ条件にて、縦断的に2年間追跡し、妄想が出現した患者と出現しなかった患者の2群の差異を頭部MRIと臨床評価により検討する。結果:平成27年には、平成22年度からの縦断研究として48名のアルツハイマー病患者を追跡中であり、経過中に16名に妄想が出現した。拡散テンソル画像によるFractional Anisotropy(FA)などの拡散指標による解析の結果、脳梁膝部と両側前頭葉白質部、内包などのFA値は、ベースラインと2年後を比較すると妄想が出現しなかった患者(32名)ではFA値は低下していなかったが、妄想が出現した患者(16名)ではFA値は有意に低下していた。
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Psychogeriatrics
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