研究課題
本研究は、アスペルガー障害(AS)などの自閉症スペクトラム障害(ASD)、および注意欠如多動性障害(ADHD)の成人患者を対象として、近赤外線スペクトルスコピー(NIRS)により課題遂行時における脳血流を記録し、各疾患における特徴的な臨床所見を検討することを目的としたものである。NIRSは非侵襲的な脳機能測定法であり、すでに主としてわが国の研究者によって、気分障害、統合失調症の臨床検査として臨床応用が行われている。本研究は、現在のところ、生物学的な臨床指標を持たないASD、ADHDに対して、臨床的に有用な指標を求める研究である。これに加えて本研究においては、AQ(自閉症スペクトラム指数)、CARRS(コナーズ成人ADHD評価尺度)などの症状評価尺度を施行し、ASDおよびADHDのスクリーニング、および診断に有用な評価項目の検討を行った。平成26年度においては、前年度に引き続き、複数の症状評価尺度を用いて、およそ80例のASDおよびADHD患者を対象として、自記式スケールにより精神症状の評価を行った。この結果、前年と同様に、ASDにおいてはADHDの症状が、ADHDにおいてはASDの症状が高頻度にみられることを明らかにし、両疾患の類似性を明らかにした。この結果は、国際学会で発表の予定である。またNIRS検査については、前年同様に例数を増やしており、健常者と比較して、両疾患とも、課題遂行時の酸素化ヘモグロビン濃度の増加が小さいことが明らかにした。この結果についても、国際学会で発表の予定である。このように、ASDとADHDには類似性の大きいことが明らかになったため、平成26年度からは、対象のリクルート時において、アイトラッカーによる視線計測も追加した。この検査は、「心の理論」を検討するために動画を注視する課題であり、ASDにおいて特徴的な所見が得られることが知られている。現在、この課題を用いて、両者の鑑別を試みている。
2: おおむね順調に進展している
研究参加者は順調にリクルートできており、現在まで80例以上に及んでいることに加えて、結果の解析も順調に進んでいる。また研究結果については、国際学会で発表後に、論文化の予定である。さらにASDとADHDの鑑別診断の精度を向上させるために、アイトラッカーによる視線計測の検査を追加した。
本年度は最終年度であり、できるだけ対象症例を増やすとともに、今回得られた臨床症状およびNIRSの結果について、論文化を進めていく。またアイトラッカーによる視線計測は、今度の発達障害の鑑別診断に有用となることが考えられるので、多くの対象者で施行するように推進をはかる。
研究実施のために検査課題作製を専門の業者に依頼しているが、これに時間がかかり、すべてが完成していないため。
引き続き、早急に検査課題の作製を行う予定である。
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