研究課題/領域番号 |
25461784
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
岩波 明 昭和大学, 医学部, 教授 (80276518)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ASD / ADHD / アスペルガー症候群 / NIRS / 鑑別診断 / 発達障害 |
研究実績の概要 |
主要な発達障害であるアスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠如多動性障害(ADHD)は出現頻度の高い疾患であるにもかかわらず、生物学的な検査法は存在しておらず、その診断は熟練した臨床医による臨床判断に頼っており、さらに診断あるいは治療のための生物学的マーカーも存在していない。またこの両疾患は臨床症状が類似しており、しばしば鑑別が困難である。近年、光トポグラフィー(NIRS)検査は、臨床的な診断ツールとして期待が高まっているが、われわれは以前の研究において、ASDにおいて言語流暢性課題遂行時におけるNIRS所見に特徴ある変化がみられることを報告している。本研究においては、ASDおよびADHD患者を対象にNIRS検査を施行して特徴的な脳血流のパターンを抽出し、これらの疾患における診断、治療経過に役立つ生物学的な指標を得ることを本研究の目的とした。 本研究においては、高機能の成人ASD40例、ADHD69例を対象とし、2種類の言語流暢性課題を検査課題として施行し、課題遂行時における光トポグラフィー(NIRS)の記録を行った。NIRSは日立メディコ社製、ETG4000を用い、プローブに全前頭型52チャンネルのものを使用した。被験者の額のほぼ全体を帯状のプローブで覆い、NIRSデータを記録した。この結果、ASDにおいては以前の報告と同様に、健常者と比較して、文字流暢性課題において前頭部の酸素化ヘモブロビンの低下を認めた。ADHDにおいては、健常者と比較して、文字流暢性課題において、側頭部の酸素化ヘモグロビンの低下がみられた。これらの結果は、NIRSがADHDの臨床診断の生物学的指標として利用されうる可能性を示唆している。現在、ASDとADHDのデータを直接比較中であり、さらに酸素化ヘモグロビンと臨床症状との関連について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、十分に解析可能な数の被験者のデータを取得し、詳細な解析が可能となっており、おおむね順調に進展したと考えられる。研究中の問題点としては、ASDとADHDの臨床的な鑑別診断である。これは両者は、成人においては症状の類似性が大きいためである。この点については、研究期間中に「心の理論」を動画で呈示中にアイトラッカーで視線計測を行い、これを鑑別診断のための補助として用いることを試みて一定の成果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
ASDとADHDの鑑別は臨床的に重要な課題である。本研究の最終的な解析は終了していないが、これまでの結果をふまえて、今後の研究の推進方法についてここに述べたい。ASDとADHDの関連については、両者が純粋に併存しているケースの他、二次的に症状が類似しているケースも存在しており、この点について十分検討がされていない。従って、今までよりもさらに多くの症例を蓄積し、ASDおよびADHDのトレイトマーカー、ステイトマーカーとなりうる指標を得ることが必要である。これには今回解析したNIRS,「心の理論」における視線計測に加えて、表情認知、注意機能の詳細な評価などの検査課題の施行を行う必要があると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、各群におけるNIRSデータを解析中であるが、チャンネル数が52チャンネルありデータ数が膨大であるため、最終的な結果を得られるまでにさらに時間が必要であるため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては、解析のための謝金、消耗品、ソフトウェア購入などに使用する予定である。
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