研究課題/領域番号 |
25461785
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
古賀 聖名子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30277032)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 統合失調症 / アドヒアランス / フォーカスグループディスカッション / 質的研究 |
研究実績の概要 |
統合失調症の再発率が高い一因として、アドヒアランスが十分でないことが挙げられる。本研究は、統合失調症の再発予防への新たな介入方法を探索するため、質的研究手法を用いてアドヒアランスの実態を明らかにし、概念モデル化することを目的とした。文書で同意取得後、アドヒアランスに関する議論指針に沿い、H26年4月24日および10月8日にフォーカスグループディスカッション(Focus Group Discussion; FGD)をおこなった。録音データを文書化した後、グラウンデッドセオリー法を用い分析した。結果は以下のようであった。 1.アドヒアランスの状態は1)アドヒアランス良好型、2)中間型、不良型、の3型があった。その関連因子は1)患者因子、2)薬剤因子、3) 患者-医師関係、4)家族、5)デイケア、6)友人、7)将来への展望であった。2.アドヒアランスのあり方は、病識、症状、生活状況の状態、治療環境により異なっていた。3.服薬に関しては、「副作用を減らしたい気持ち」と「症状悪化の恐怖」との間で揺れていた。4.家族関係や患者―医師関係の状態でアドヒアランスは大きく変化した。5.友人との関係は希薄で、交流を躊躇し社会的ネットワークの拡大が進まないようであった。6.デイケアは、生活リズム形成、自宅以外の居場所、症状体験の共有など多くの役割を担っていた。 2つのFGDメンバーでは、家族との関係が密な反面、友人関係の構築が進まない状況が明らかになった。以上より、デイケア等を基盤として社会的ネットワークを拡充し、家族のケア負担を減らすことが課題と思われた。この結果は、平成27年6月に開催された第111回日本精神神経学会総会において発表し、優秀発表賞(ポスター部門)を受賞した。 その後も、平成27年6月10日および12月18日にFGDをおこない、解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では理論的飽和に至るまで、6つのFGDを予定しているが、現在までのところ4つ終了しており、研究の進行がやや遅れている。理由としては、結果の質的分析に時間がかかっていること、同意が得られるメンバーを得るのに時間がかかっていることである。
|
今後の研究の推進方策 |
理論的飽和に達すると思われる6回のFGDまで、今後少なくとも2回のFGDをおこない、統合失調症者のアドヒアランスの実態と患者心性について最終的なテーマを見出し、統合失調症治療に有用な知見を探っていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
統合失調症者のアドヒアランスの実態と患者心性の知見を得るための理論的飽和にいたるまで、少なくとも6回のフォーカスグループディスカッション(症例数30人程度)を行う必要があるが、現在まで4回のフォーカスグループディスカッション(症例数20人)しか終了していない。今後少なくとも2回のフォーカスグループディスカッションを行う必要があるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今後2回のフォーカスグループディスカッションを行うため、参加メンバーおよびフォーカスグループディスカッションの補佐を行うスタッフに対する謝金、文具、参考図書などに研究費が必要である。
|