[目的] 統合失調症の再発率が高い一因として、アドヒアランスが十分でないことが挙げられる。本研究は、統合失調症の再発予防への新たな介入方法を探索するため、質的研究手法(GT法)を用いて統合失調症者のアドヒアランスの実態を明らかにし、概念モデル化することを目的とした。 [対象と方法] アドヒアランスに関する議論指針に沿い、数人のグループでFGDをおこなった。録音データを文書化した後、GT法を用い分析した。 [結果] 現在まで5回計26名)のFGDをおこなった。その結果は以下のようである。①アドヒアランスの状態は1)アドヒアランス良好型、2)中間型、不良型、の3型があった。②その関連因子は1)患者因子、2)薬剤因子、3) 患者-医師関係、4)家族、5)デイケア、6)友人、7)将来への展望であった。③アドヒアランスのあり方は、病識、症状、生活状況の状態、治療環境により異なっていた。④服薬では、「副作用を減らしたい気持ち」と「症状悪化の恐怖」との間で揺れていた。⑤家族関係や患者―医師関係の状態でアドヒアランスは大きく変化した。。⑥友人との関係は発症とともに希薄になり、改善後も社会的ネットワークが拡大しなかった。一方デイケアは、生活リズム形成、自宅以外の居場所、症状体験の共有など多くの役割を担っていた。またこの安心できる環境で、ノーマライゼーションがなされ、自信の回復と社会性の向上がなされていた。⑦疾患を受容し、人生の目標を持つことが良好なアドヒアランスを促進していた。 [考察] 統合失調症者のアドヒアランスには、患者自身ばかりでなく、服薬、家族、患者―医師関係、デイケア、友人関係、将来への展望が関与していたこと、また、初期には家族や医療関係者との関係が密で、社会的ネットワークが拡大しないこと、一方デイケアがノーマライゼーションや社会性の向上に重要な役割を果たしていることがわかった。
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