研究課題/領域番号 |
25461790
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
熊野 宏昭 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90280875)
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研究分担者 |
野田 隆政 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神科, 医長 (50446572)
今井 正司 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 准教授(Associate Professor) (50580635)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 注意訓練 / 健常被験者 / ランダム化比較試験 / 反すう思考 / 右前頭極 |
研究概要 |
今年度は、大うつ病患者への介入を行う前段階として、注意訓練(ATT)の介入効果と脳機能への影響の関連を探索的に明らかにすることを考え、健常被験者を対象にした調査研究と、光トポグラフィー(NIRS)による脳血流測定を含むランダム化比較試験(RCT)を行った。 RCTでは健常大学生を無作為に介入群12名、コントロール群13名に割付け、以下の通り3回の実験を実施した。なお、介入群は2週間自宅でATTを実行した。1回目(pre):質問紙、両耳分離聴課題の実施、ATTの心理教育(介入群のみ)。2回目(1回目から1週後):ATT実施状況の確認(介入群のみ)。3回目(post:2回目から1週後):質問紙、両耳分離聴課題の実施、ATT実施状況の確認(介入群のみ)。そして、preおよびpost時点で、両耳分離聴課題中の脳血流量の測定を52チャンネルNIRSを用いて行った。 ATTの介入効果が示された領域は、右下側頭回、左背外側前頭前野(DLPFC)、左上側頭回~下前頭回弁蓋部、右下前頭回~DLPFC、右前頭極であった。そして、ATTの実施により、選択的注意と注意の分割課題で賦活される右前頭葉の活動が抑えられ、注意の転換課題で賦活される左前頭葉~側頭葉の活動が高まる変化が認められた。さらに、介入前に反すう思考と注意の分割課題による賦活に負の相関が認められた脳部位を考慮すると、ATTの実施によって右前頭極の活動が抑えられることで、反すう思考が低減する可能性が示唆された。 以上より、健常大学生を対象にした場合であっても、2週間のATTの実施によって、右前頭葉の活動が抑えられ、左前頭葉~側頭葉の活動が高まることと、右前頭極の活動が抑えられることで反すう思考が低減する可能性があると考えられた。そのため、大うつ病患者の脳機能や反すう思考、抑うつ症状に対しても効果を示す可能性は十分にあると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大うつ病患者への介入を行う前段階として、注意訓練の介入効果と脳機能に及ぼす影響の関連を探索的に明らかにする必要があると考え、当初の研究計画には含まれていなかった健常被験者を対象にした調査研究とランダム化比較試験を実施した。そのため、大うつ病患者への介入は、2年次に開始することになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度4月の時点で、大うつ病患者への介入研究の準備は完了し、ランダム化比較試験への1例目の組み込みを5月中にできる見込みである。今後は、一定の計画に厳密に沿った研究を遂行するとともに、組み込み症例が増やせるように、様々な機会を利用して参加者募集を続けていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
大うつ病患者への介入を行う前段階として、注意訓練が脳機能に及ぼす影響と介入効果との関連を探索的に明らかにする必要があると考え、当初の研究計画には含まれていなかった健常被験者を対象にした調査研究とランダム化比較試験を実施した。そのため、大うつ病患者への介入は、2年次に開始することになり、初年度に計上した研究費の一部分を使う必要がなくなった。 2年次4月時点で、大うつ病患者への介入を開始する準備が整い、5月中に1例目の組み込みを行う見込みであることから、1年次に未使用であった研究費と、2年次の計画に含まれる研究費を使用する予定である。
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