研究課題
昨年度に引き続き、疼痛性障害の生理学的指標を目指すため、適切なパラダイムを作成した。基本的な考え方としては末梢感覚刺激に対する大脳皮質情報処理過程の障害を検出する方法論の開発が主たるものである。感覚刺激としては侵害受容刺激と聴覚刺激を選択している。侵害受容刺激は痛みに直結するものであり、聴覚刺激は侵襲度の少ない方法として優れている。侵害受容刺激はAδ神経選択的刺激可能な表皮内刺激電極を用いて行った。今年度は正常コントロール群で上肢、下肢へのAδ神経刺激による誘発電位(CzにおけるN2/P2反応)、感覚閾値(電流量)、刺激が分かってから反応するまでの時間を測定し触覚Aβ神経刺激との比較を詳しく行った。それにより、伝導速度はこれまで生理学的に分かっている範囲内に収まっており、また脳内プロセシング時間からは侵害受容刺激でも触覚刺激でも大きな差がないことが判明した。これが病的な状態像ではどうなっているか、今後検討を加え論文にまとめる予定である。次に聴覚刺激であるが、昨年行った感覚記憶を反映していると考えられるクリック音連発後のOFF反応についての論文を発表した。今年は大脳皮質内抑制系を反映できるパラダイム(Prepulse Inhibition)や感覚情報の変化を捉えるためのパラダイム(Change-Related N1)を患者に行い、情報処理システム障害の定量化を行っていく。
3: やや遅れている
聴覚刺激、侵害受容刺激のパラダイムの開発はほぼ終了した。しかし、解析方法については更に検討が必要であること、また慢性痛患者の選定に時間がかかっており全体としてはやや遅れている。
触覚と侵害受容刺激の比較について検討を重ねる。また、痛みと重なって見られやすい抑うつ症状についても相互作用を調べる必要が出てきている。今年度は特に治療反応性につながる指標を求めて検索を行っていく。
研究の進行具合から、刺激装置の購入を延期したため。また次年度の人件費として必要になったため。
刺激装置の購入と、研究補助員を雇用する予定にしている。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 図書 (2件)
PLoS One
巻: 9 ページ: e106553
10.1371/journal.pone.0106553 [doi] PONE-D-14-03606 [pii]
Pain Res Manag
巻: 19 ページ: 302-308
16325 [pii]
Pain Pract
巻: 15 ページ: 300-307
10.1111/papr.12173 [doi]
末梢神経
巻: 25 ページ: 5-12
脊椎脊髄ジャーナル
巻: 27 ページ: 265-273
Modern Physician
巻: 34 ページ: 280-283