研究課題/領域番号 |
25461794
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
菊池 尚美 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (30450589)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト前駆細胞 / うつ病 |
研究概要 |
グリア細胞であるオリゴデンドロサイトの関連遺伝子や細胞密度の低下がうつ病死後脳において報告されている。オリゴデンドロサイトは、オリゴデンドロサイト前駆細胞(oligodendrocyte progenitor cells (OPCs))が分化して供給される。OPCsは脳内全般に存在し、生涯に渡って増殖してオリゴデンドロサイトを産生することが知られている。我々はスタンレーブレインバンクから提供を受けて健常人群とうつ病患者群の死後脳を調べ、OPCs、オリゴデンドロサイトの細胞密度がうつ病脳内部位特異的に低下していることを見出した。このことは死亡時の病態が寛解期または憎悪期に係わらず、うつ病脳内において持続的にOPCs、オリゴデンドロサイトの細胞密度が低下していることを示している。これまでに抗うつ薬は神経細胞を対象に脳内モノアミン濃度を上昇させることを目的として使用され一定の効果を上げてきたが、寛解率が低い、再発率が高いなどの問題点が残っている。よって、うつ病発症に至る過程あるいはうつ病態における脳内OPCs、オリゴデンドロサイトの変化を明らかにすることは、現在の抗うつ薬の問題点を明らかにし、新規作用機序を持つ薬の開発に繋がる意義がある。本研究は、増殖能を持ちオリゴデンドロサイトに分化するOPCsに注目し、モデル動物とOPCs培養細胞を用いて病態の解明と治療法を開発することを目的としている。うつ病脳内におけるOPCsの増殖、分化を検討するために適切なモデル動物の作製を行い、現在行動実験を進行している。メカニズムを解析するためのOPCs培養細胞系は、成獣ラット海馬の他脳各部位から得られ、OPCsの特徴であるNG2コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現が認められた。OPCs培養細胞系を用いてうつ病関連ホルモンによる影響について検討し、増殖・分化との関連を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はモデル動物とOPCs培養系を確立し、今後の研究を遂行するための基盤ができたと考える。OPCs培養系に関して現在論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、順次研究を遂行する。具体的には、OPCs培養系を用いて脳内環境による脆弱性とモデル動物のOPCsに係わる変化を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に遠心機を購入する予定だったが、研究所内の他プロジェクトから遠心機を借りることが出来たため、購入の必要がなくなった。 OPCsに関連する抗体を購入または作製(一部外注も検討)し、FACS、免疫組織染色、ウェスタンブロット等の解析を行う。また、本研究の遂行に必須である培養関連の消耗品、分子生物学的解析に必要な試薬・消耗品、以上に関連する備品に使用する。
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