研究課題
リンパ腫細胞株におけるグルコーストランスポーター遺伝子GLUT1-12のmRNA発現量を検討するにあたり、CD19抗体でnegative selectionした単核球がコントロールとして適していることがわかった。リンパ腫細胞株(CTB-1、TL-2、SLVL、HKBML、HDMar2)のGLUT1-12遺伝子のmRNA発現量を調べたが、明らかに発現量が増加しているGLUTのサブタイプはなかった。・しかし、一部の細胞株でGLUT5の発現が亢進しており、現在shRNAを導入により、細胞増殖が抑えられるか検討している。合わせて、臨床検体での発現をmRNA、蛋白レベルで検討している。・蛋白レベルでのグルコーストランスポータの発現をみるために、リンパ腫患者のリンパ節生検検体の未染パラフィン切片を用いて、GLUT1、GLUT3、Hexokinase IIの免疫組織化学染色を行っている。これまで、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)80、低悪性度リンパ腫5(濾胞辺縁帯リンパ腫3、SLL2)症例で、GLUT1、GLUT3、HKの免疫組織化学染色を終えている。肺がん組織と比較してリンパ腫検体の染色性は総じて弱い傾向であるが、一部の症例でGLUT1、GLUT3が腫瘍細胞の80%以上陽性であり、現在それらの症例に特徴がないか検討中である。Hexokinase IIはほぼ全例で染色性および陽性率が弱かった。・これらと並行して、DLBCL症例をBCL-2、BCL-6、MUM-1染色によりGC、Non-GCサブタイプに分け、治療前および中間FDG-PET所見、SUVmax値、さらに、GLUT1、GLUT3、Hexokinase II染色陽性率とDLBCLサブタイプとの関係、治療に対する反応、予後を検討している。
3: やや遅れている
・細胞株でのGLUT1-12遺伝子mRNA発現量は期待に反してコントロールと比して差がなく、細胞株の種類を変えても、また、実際の臨床検体を用いても結果は同じであった。他の癌腫の細胞株ではGLUT1-4のいずれかの発現が亢進しているものが多く、それとは異なる結果であったため、確認実験を繰り返す必要があった。・ただ、一部の細胞株、臨床検体でGLUT5の発現が高いことが判明した。GLUT5遺伝子の発現を抑制することにより細胞増殖が抑えられるかを実験的に明らかにするために、現在ベクターを作成中である。・GLUT1、GLUT3、HexokinaseIIの免疫組織化学染色は、至適条件を見つけるのに時間がかかった。現在、80症例のリンパ腫症例で免疫染色を行っており、予定症例数のの50-60%まで進んでいる。DLBCL症例でのBCL-2、BCL-6、MUM-1の免疫組織染色も同様に、全体の6割前後の進捗状況である。・病理専門医と共同で染色標本の評価を行なったが、一部症例で染色不良のため再染色を行っている。また、GLUT1、GLUT3の免疫染色で陽性率80%以上の症例があり、その臨床的特徴について検討中である。
・GLUT5遺伝子の発現が高い細胞株がいくつかあり、この細胞株でGLUT5の発現をshRNAを遺伝子導入し抑制することで細胞増殖が抑えられるか、逆に、GLUT5遺伝子を導入して強制発現することで細胞増殖能が高まるかを検討する。また、実際のリンパ腫症例でのGLUT5の発現をリアルタイムPCR、免疫組織染色で調べ、病理組織型間での違い、FDG-PET所見、治療に対する反応、および予後との相関を検討する。・GLUT1、GLUT3、Hexokinase II、およびBCL-2、BCL-6、MUM-1の免疫組織染色をびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)症例中心に引き続き行う。これらを通じて、①GLUT1、GLUT3、Hexokinase II陽性率とFDG取り込み、予後と相関があるか、②DLBCLのGC type、Non-GC type間でグルコーストランスポーターの蛋白レベルでの発現、およびFDGの取り込み、予後に差があるかを明らかにする。免疫組織化学染色条件が安定してきており、短期間に予定症例数の染色が終了できると予想している。・免疫組織化学染色の評価には病理専門医との共同評価が不可欠であるが、今年度前半にすでに検討日を2日確保し、標本の評価も今後加速するものと考えている。
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