研究課題
基盤研究(C)
これまでに、Gd-EOB造影MRIにおける肝細胞癌の信号強度は肝癌細胞におけるOATP1B3の発現と高度に相関すること、またOATP1B3発現は肝癌多段階発癌にともなって減少し早期肝癌ではその約80%ですでに減少していることを明らかにしてきた。また肝細胞相で高信号を示す肝癌(高信号肝癌)は生物学的低悪性度で予後が良好であることを明らかにしてきた。本年度はGd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相で高信号を呈する肝癌(高信号肝癌)の遺伝子・分子病理学的背景を検討した。免疫染色での検討で高信号肝癌はstem cell系の分子マーカーに乏しく、一方、成熟肝細胞マーカー由来の分子マーカーの高発現を認めた。遺伝子解析では、高信号肝癌(OATP1B3高発現肝癌)は低信号肝癌とは遺伝子学的背景が異なるsubtypeであり、肝細胞機能を制御する分子の高発現がみられ、予後の良好な肝癌であることを明らかにし報告した。さらに、高信号肝癌ではHNF4aの高発現が見られ、高信号肝癌由来の肝癌細胞でHNF4aをノックアウトすると、ヌードマウス移植でGd-EOB-DTPAの取り込みが低下し、一方腫瘍の悪性度は亢進することを明らかにした。すなわち、肝癌におけるHNF4aの発現がGd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相の所見と密接に関連し、同時に肝癌の生物学的悪性度と密接な関連があることを明らかした。これらに加え、肝癌多段階発癌における境界病変内多血性巣の血行動態を明らかにし、dynamic CT/MRIや造影超音波診断における古典的肝癌の発癌に対する画像バイオマーカーを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
以前から継続していた研究が順調に進行した。
上記のように研究過程でHNF4aの本研究における重要性が判明したので肝癌の多段階発癌過程におけるHNF4aの発現や肝癌悪性度との関連を研究する。またラットあるいはマウスで高信号肝癌の作成をめざし、今後の研究の基礎を確立させたい意向がある。
研究(免疫染色)の施行がやや遅れたため。今後2か月以内に免疫染色施行予定でそれに使用する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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