研究課題
本研究では、分子バイオマーカーと一般的な画像所見(CT, MRIなど)の対比から、肝癌の早期診断、性状診断や治療効果予測・判定における有効な肝癌の分子バイオマーカーを反映する画像所見(バイオマーカー)を検索することを目的とした。Gd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相で高信号を示す肝細胞癌(高信号肝癌)の分子病理学的背景の検討を行い、成熟肝細胞(mature hepatocyte)の性状に類似した特徴を有する亜型であることを明らかにした。OATP1B3高発現肝癌(高信号肝癌)の分子・遺伝子学的背景に関する研究を行い、胆汁酸制御パスウェイの亢進、肝細胞マーカーの発現亢進、肝細胞機能維持に関わる転写因子HNF4aの活性化が認められる肝癌の遺伝子・分子学的亜型であることを明らかにした。さらに本年度は、Beta-cateninの変異を伴う肝細胞癌(b-catenin HCC)の画像と病理学的特徴に関する研究の総括を行った。b-catenin mutation型肝細胞癌は拡散強調像で有意に低い信号強度と高いADC値を示し、病理学的検討では高分化型と偽腺管型が有意に多いことを明らかにした。さらに、肝細胞癌におけるHNF4A発現とOATP1B3発現およびGd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相の信号強度の関連に関する研究を行った。肝細胞癌のHNF4a発現とOATP1B3の発現、肝細胞相における増強率との間には正の相関が認められ、腫瘍の分化度が低下するにつれてHNF4aの発現低下が認められることを明らかにした。以上の結果は、Gd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相の信号強度からそれぞれの肝癌の分子病理学的背景の推定が可能であることを示し、肝癌の個別化医療に貢献するものと考えられた。
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