研究実績の概要 |
本研究は、分化型甲状腺癌術後の放射性ヨウ素(I-131)内用療法の前処置としておこなわれるヨウ素摂取制限が、I-131内用療法にどのような影響を与えるかを検証し、尿中ヨウ素濃度測定の臨床的意義を明らかにすることを目的とした。また、他に本治療に影響を与えうる因子として、甲状腺床へのI-131の取り込みと血中サイログロブリン濃度も合わせて調査した。 患者の文書での同意を取得した上で、前向き研究でおこなった。対象患者は、I-131 1,110MBqで内用療法(アブレーション)を行った57例。このうち、アブレーションから6~8カ月後に実施する治療効果を判定するためのシンチグラフィを撮影しなかった12例を除外し、45例が評価対象となった。ヨウ素摂取制限の方法は、市販低ヨウ素食を摂取する群と自己管理群の2通りの方法を設定した。ただし、ヨウ素摂取制限の方法の選択は、無作為割り付けではなく、患者自身の任意の選択(コホート)とした。 全体の尿中ヨウ素濃度の平均は、ヨウ素制限摂取前300μg/dLを超えていたものが、制限後は100μg/dL以下となり、統計学的に有意に低下していた。2通りに設定したヨウ素摂取制限の方法別では、市販低ヨウ素食を摂取した群と自己管理群の間では、ヨウ素制限前・後の尿中ヨウ素濃度に有意差は認めなかった。 アブレーションから6~8カ月経過した時点でシンチグラフィを撮影し、甲状腺床への集積の有無で、アブレーション成否を判定した。集積消失・残存について、単変量・多変量解析をおこなったが、アブレーション時の尿中ヨウ素濃度、血中サイログロブリン濃度のいずれも、有意な因子とはならなかった。一方で、アブレーション時の甲状腺床への集積の強さが、有意な独立因子となることが示された。 以上の結果について、前年度までに分野の国内・海外のこの主要学会で発表し、今年度は、英語論文を完成させた。
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