研究課題/領域番号 |
25461813
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
渡邉 尚武 滋賀医科大学, 医学部, 特任助教 (60570364)
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研究分担者 |
新田 哲久 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (40324587)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酸化ナノ鉄粒子 / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
①前年度同様、表面電荷をマイナスチャージしたサイズの異なる32nm、55nmの2種類の酸化鉄ナノ粒子にシスプラチンを1時間、24時間反応させたものを合計4種類の検体を作成。 ②ウサギ肝VX2腫瘍モデル12羽を無作為に3羽ずつ4群に分類。各群に①で作成した検体を0.8mmolFe/kgに径カテーテル的に動注。動注直前、1日後、7日後にMRIを撮像し腫瘍体積の増減を測定。また7日後撮像後、ウサギを犠牲死させた後、腫瘍組織および周囲正常組織を摘出。各組織に含まれるプラチナおよび鉄の濃度測定を行った。 ③腫瘍増大率は32nm酸化ナノ鉄粒子にシスプラチンを1時間反応させたものが294.4%、24時間が288.1%。55nm酸化ナノ鉄粒子の1時間で269.5%、24時間で271.9%となり各腫瘍増大率には明らかな有意差は認められなかったことから動注後7日間の観察期間内では粒子径や反応時間による抗腫瘍効果の差は少ないと推測される。 ④組織内のプラチナ濃度は腫瘍、正常肝ともに55nmよりも32nmの酸化ナノ鉄粒子を反応させたものが多く含まれた。同サイズの粒子同士の含有量は1時間反応も24時間反応も差は生じなかった。この結果より粒子径の小さな酸化鉄なの粒子の方がEPR効果により血管内皮間隙を介して癌細胞組織への取り込みが多くなっていると考えられる。ただし反応時間によるプラチナ濃度の差はいずれの粒子径でも影響が少ないと考えられる。 ⑤鉄濃度はいずれも腫瘍内が高く正常肝実質内は少なかった。腫瘍には鉄を貪食するKupper細胞が乏しいので、この結果は想定範囲内であったが32nmの酸化ナノ鉄粒子のほうが55nmのものよりも腫瘍内への取り込みが多い傾向が認められた。この結果については粒子径による貪食作用の差か腫瘍内のKupper細胞の数の差によるものかは不明であり更なる考察、検討が必要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実施予定であった肝腫瘍移植モデルを使用した酸化ナノ鉄粒子動注実験のMRI画像評価および組織摘出は終了しておりプラチナ濃度、鉄濃度の分析を行った。データの分析、解釈に関しては来年度実施予定の病理学的評価も併せて再検討を行う予定。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、摘出した肝組織の病理標本を作製。鉄染色を行い組織内の鉄の割合を定量的に評価を行う。 また研究結果のまとめとして、それまでの実験結果のデータを総合して再評価、検討を行う。
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