研究課題
侵襲の少ない検査法である機能的MRIを用いた認知機能の定量手法を確立すること、とりわけデフォルト・ネットワークといった概念に代表される脳の部位間の結合性によるバイオマーカーの確立が本計画の目的であった。そのために「治る認知症」と呼ばれ、病状が多相性に変動する正常圧水頭症を対象とし、統計上の差だけではない、診断に使える手法の確立を目指した。機能的MRIは神経血管連関に依存していることから感度・特異度ともに低く、それが有用なバイオマーカーの見出されていない理由と思われた。必然的に我々の研究はMRIに含まれる情報を神経活動と血流現象に分離するものとなり、このために独立成分分析を使った独自のノイズ除去法を開発した。この手法を最適化するため、まず健常者での情報の再現性を手がかりに、神経活動と血流が分離できることを示した(投稿済)。つぎに、この血流情報そのものが、血流到達の時間差を検出したラグマッピング法として有用であることを脳血管障害例において確かめた(投稿準備中)。血液の移動速度の分布は健常被験者内で安定しており、縦断研究に有用と期待される。最後に、特発性正常圧水頭症では静脈還流の異常があり、治療によって正常化することを初めて観察した(投稿準備中)。これまで、脳脊髄液を抜くことで特定の症状が改善するメカニズムは未解明であったが、本手法で解明が進むとともに、本疾患の早期診断法としての応用が期待される。また、この成分を除去する工夫によって、安静時fMRIの品質改善ができる。ICAを用いたノイズ除去は、まだ広く活用されていないが、80%におよぶ十分なノイズ除去が推奨されるとともに、適切な処理がされていない従来の結果を見直す必要がある。
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