頸動脈の狭窄部位を金属製のステント(鞘から抜くと自然に大きくなるコイル状のもの)で広げる治療では、治療前後で脳内に供給する各動脈の血流量が変化すると予想される。この血流の変化は、ステント留置後の状態管理のために重要であるがこれまで経過を追った研究は少ない。私たちはまず施設の倫理委員会の許可を得た。その後説明および文書による同意が得られた11人の患者で、ステント留置前、留置1日後、1週間後、3か月後の両側内頚動脈、脳底動脈、両側中大脳動脈の血流量を測定した。測定には核磁気共鳴画像としてまず血管の構築が得られる三次元核磁気共鳴血管画像を撮影しそれをもとに測定するべき動脈になるべく垂直になるように、血流量測定のシーケンスであるシネ画像を設定した。撮影は患者の末梢拍動をモニターしながら測定した。撮影の特徴として画素サイズを0.6mmと先行研究より小さくしより誤差が少なくなるようにした。その後画像データをPCに送り動脈の拍動より半自動的に血管腔を定義する自作ソフトウエアを用いて解析した。結果として、ステント留置後、ステントを留置した内頚動脈と同側の中大脳動脈の血流量は増加した。対側の内頚動脈と脳底動脈の血流量は、留置3か月後では術前と比べて減少した。両側の内頚動脈と脳底動脈の血流量の合計は、ステント留置後増加し、その後の3か月で減少した。ステント留置と対側の中大脳動脈の血流量には有意な変化がなかった。結果の解釈として、頸動脈ステント留置後各血管の血流量はダイナミックに変化し、新しい平衡状態に達するために数か月要すると考えられた。
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