研究実績の概要 |
腫瘍内部の低血流域はしばしば低酸素域を伴い、抗癌剤や放射線などに対して治療抵抗性を示す。しかし、低血流域での低酸素以外の特性については、少なくとも画像を用いた手法では十分に評価されていない。生体下での低血流域に関する新たな知見は、より良い治療戦略に繋がる可能性があると考えられる。本研究の目的は、腫瘍内低血流域の特性、特に低酸素以外の特性評価を、PETおよびMRIの双方から得た機能・代謝画像により多角的に行うことである。 今年度は、腫瘍内低血流と関連のある腫瘍内FDG集積の不均一性について、昨年度から引き続いて検討した。昨年度は尖度や歪度など、比較的容易に得ることのできる腫瘍内不均一性の指標を用いたが、今年度はそれをさらに発展させ、内部構造の解析法であるテクスチャ解析を用いて検討を行った。テクスチャ指標としては、1次のSUV histogram、2次のspatial gray level dependence matrix (SGLDM) 各種、高次のneighborhood gray-tone difference matrix (NGTDM) 各種を用いた。腫瘍内血流に関しては、MRIとは異なるが、dynamic造影法併用のdual-energy CTから得たヨード造影濃度を指標とした。膵癌24病変における検討では、腫瘍内ヨード造影濃度は腫瘍の体積と逆相関し、様々なテクスチャ指標と関連することが分かった。中でも、SUV histogram variance, SGLDM uniformity, correlation, NGTDM contrast, complexityは強い正(r>0.6)の、SGLDM entropy, homogeneityは強い負(r< -0.6)の相関を示すことが明らかとなった。これらは、SUVと関連のあるテクスチャ指標とは異なっていた。この成果は、2015年の米国核医学会総会で報告した。
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