研究実績の概要 |
腫瘍内部の低血流域はしばしば低酸素域を伴い、抗癌剤や放射線などに対して治療抵抗性を示す。しかし、低血流域での低酸素以外の特性については、少なくとも画像を用いた手法では十分に評価されていない。生体下での低血流域に関する新たな知見は、より良い治療戦略に繋がる可能性があると考えられる。本研究の目的は、腫瘍内低血流域の特性、特に低酸素以外の特性評価を機能・代謝画像により多角的に行うことである。 腫瘍内低血流と関連があると考えられている腫瘍内FDG集積の不均一性について、手術前の化学療法前後にFDG PETが行われた食道癌において、治療効果や予後の予測に有用であるか否かを検討した。化学療法前の腫瘍内部の構造に対してテクスチャ解析を行い、metabolic tumor volume(MTV)等の腫瘍体積指標との関連を求めた。腫瘍体積と関連性の低いテクスチャ指標を検出することを目標とした。食道癌35病変に対してテクスチャ解析を行ったが、1次、2次、高次の多数の指標を用いた。様々なテクスチャ指標が腫瘍体積指標と関連していた。テクスチャ、腫瘍体積、いずれの指標も治療効果予測を行うことはできなかった。腫瘍体積指標は再発の予測にも関連がなかったが、複数のテクスチャ指標は有用であることが分かった。多変量解析の結果、2次指標であるspatial gray level dependence matrix (SGLDM)- entropy, inverse difference moment, uniformityが統計学的に有意な再発予測因子であり、中でもSGLDM inverse difference momentは腫瘍体積やFDG集積に影響されない因子であることが明らかとなった。この成果は、2016年の米国核医学会総会で報告した。
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