研究実績の概要 |
心臓CT受診患者45人を対象に、CT検査前、直後(15分)、24-48時間後の末梢血リンパ球を採取し、PNAプローブを用いたDNA二本鎖切断修復関連蛋白(γH2AX)の定量を行い、CTにおける被曝の物理的指標(CT dose index :CTDI, the dose length product : DLP, and size-specific dose estimates: SSDE)とDNAの損傷の程度の相関を検討した。併せて、人体の体幹部を模倣したファントムの中心に血液を封入したシリンジを挿入し、それに対してCT撮影を行い、CTDI、DLP、SSDEとDNAの損傷が相関するか否か検討した。 心臓CTにおける臨床検討においては、CT前、CT直後のγH2AXはそれぞれ1.21±0.19 to 1.92±0.22 foci/celであり、CT直後においてγH2AXは統計学的に有意に増加していたが、1-2日後では1.06±0.15 foci/cellとなり、CT前の値と有意差は認めなかった。また、CTDI、 DLP、SSDEはいずれもγ-H2AX foci.と統計学的に有意に相関していた(r = 0.537, r = 0.537, r = 0.540, 危険率はいずれもp<0.001)。人体ファントムによる検討では、CTDIとγ-H2AX fociは強い正の相関を示した(r = 0.987)。またSSDEとも極めて強い相関を示した(r= 0.999)。 γ-H2AX foci とCTDIあるいはSSDEの相関は、in vivoの検査においてはin vitroの検査よりも相関の度合いが小さかったが、これは生体では血液循環量、心拍出量等の循環速度、複雑な体の組成によるX線吸収の不均一等に起因するものと考えられた。
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