研究概要 |
本研究の目的は、全てのMRI装置でのMRエラストグラフィ(MRE)を可能にするための技術開発にある。MREを実施するためには、MRI装置に同期した加振動システムとMRE専用パルスシーケンスが必要となる。我々は既にMRE専用のパルスシーケンスを使用せずにMREを実施する技術を確立している(No.2437 ISMRM2013)。現状の加振動システムはMRIと加振を同期させるために、MRIと加振動システムとの配線接続が必須である。しかし、この同期方法では装置に余分なケーブル等を配線(あるいは改造)する必要があり、本研究の目的である「全てのMRI装置でのMRE実施」を実現するのが困難となる。そこで、配線が不要の加振動システムを構築し,MRIから完全独立したシステムを構成した。 マグネットルームに自作のダイポールアンテナを設置し、そのアンテナをプロトンの共鳴周波数にtuningしたマルチバンドレシーバに接続した。撮像領域から十分に離れた場所に設置したダイポールアンテナはMRIが撮像するときに送信する励起RFを受信する。受信した信号は増幅と波形加工を施すことで、加振動システムのスタートトリガとして使用した。これにより、MRIシステムと振動システムとの間に物理的な接続を必要としない「MRIから完全独立したMRE加振システム」を構築できた。 開発した加振システムを利用して実証実験を実施した。実験には3T(テスラ)MRI臨床機を使用し、撮像対象は寒天ファントムとした。ファントム実験の結果から「MRIから完全独立したMRE加振システム」によるMREが実施可能であることを実証した。この実証実験により、すべてのMRI装置による(MRE対応装置でなくても)MREが実施可能であることを実証したことになる。同時に、本研究の結果はMREの潜在的な利用者を増加させることに寄与する。
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