研究課題
アルファ線放出核種である塩化ラジウム-223(Ra-223)は骨に親和性を持っており、転移性骨腫瘍に対する新しいRI内用療法剤として開発され、最近、去勢抵抗性前立腺癌骨転移に対して全生存期間を延長する治療薬として国内外で臨床に導入された。本研究において平成28年度は、Ra-223の化学的物理学的特性を明らかにし、測定・計数や管理・汚染除去、線量評価などに関して取り扱う上での手法を確立するために、平成25-27年度に引き続き各種計測機器によるガンマ線と特性X線(光子)の計数、汚染を想定した汚染除去に関する実験、イメージングから線量評価への基礎検討を行った。本研究者の大学にはRa-223の使用許可を持つ実験室があり、各種の計測機器が備わっており、これらを用いてRa-223の測定の基本的事項を確認するとともに、測定の速度、時定数、距離などの条件を変えて、各タイプの計測機器で一般によく使われる機種を取り上げて測定の特性を調べた。また様々な素材を用いて、EDTAやRIクリーナの汚染除去能を調べた。成果としては、GM計数管、NaI(Tl)シンチレーション計数管、ZnS(Ag)検出器の特性を明らかにし、今回の検討の条件下で、GM計数管の方がNaI(Tl)シンチレーション計数管よりも計数効率がよい可能性のあることを示した。一方アルファ線用ZnS(Ag)検出器は距離が離れると計数効率が低く、Ra-223が放出する光子によってサーベイすることが妥当であることを示した。汚染除去に関しては、素材に付着したRa-223が乾燥してしまうといずれの除去剤を用いても除去されにくいため、早期の除去が重要であることを示した。Ra-223がわが国でも2016年3月28日に医薬品承認され、臨床の場で広く使われ始めたことから、本研究で得られた知見は重要であると考えられる。
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