研究課題
基盤研究(C)
国立循環器病研究センター研究所保有の小動物用7T MRI装置ではウサギを撮像することが可能であり、脳に関しては比較的良好な画像が得られていたが、より詳細な病態診断のためには高解像度化が望まれる状況であった。心臓に関しては良好な画像は得られておらず、動きの影響の補正法の改善、空間分解能の向上などが必要であった。さらに、大動脈などの血管壁の動脈硬化巣に関しては、空間分解能不足のために全く観測できない状況であった。これらの主な原因は、使用していたRFコイルの感度が低いことであった。上記のMRI装置には、ウサギ撮像用のRFコイルとしては、広範囲の撮像は可能であるが感度が低いもの(ボディコイル)しか付属していなかった。そこで、局所撮像用の高感度RFコイルを製作した。ボディコイルと同様の送受信兼用の円筒形のクアドラチャコイルとし、内径をボディコイルの154 mmに比べて100 mmと小さくすることでウサギの体に密着するようにし、さらに長さを短くすることで高感度化を目指した。製作したRFコイルを使用することによって、ボディコイルを使用した場合に比べて画像の信号対雑音比が約1.7倍になることがファントム実験により確認された。したがって、製作したRFコイルを使用することにより、より高解像度の局所画像が得られると期待される。
3: やや遅れている
ウサギの体に密着し、かつウサギの体の各部位やMRI装置の各部品との干渉が無く、操作を支障なく行うことが出来てウサギへの負担も少ないRFコイルのデザインを決定するのに予想以上に時間がかかり、RFコイルの完成が遅れたため、研究の進捗が予定よりもやや遅れている。
平成25年度に製作したRFコイルを使用して、撮像条件の最適化を行う。脳に関しては、T1およびT2強調画像、MR angiography(MRA)、拡散強調画像、さらにarterial spin labeling(ASL)による脳血流画像などの撮像条件の最適化を行う。心臓に関しては、左室駆出率や心筋壁厚などの計測のためのシネ撮像、心筋梗塞巣の描出のための遅延造影撮像などの最適化を行う。血管の動脈硬化巣に関しては、T1、T2およびプロトン密度強調画像、さらにMRAの撮像条件の最適化を行う予定である。その後、WHHLMIウサギの病態の経過観察を開始する。動脈硬化があまり進行していない若齢である6月齢頃からフォローアップを開始し、1ヵ月毎に30月齢までMRI検査を繰り返し行う。死亡時には解剖し、病理組織解析を行い、MRI画像との比較を行う。3-6匹程度のフォローアップを行う予定である。
予定よりも安価にRFコイルを製作することが出来たこと、MRI装置の故障が予想よりも少なかったことが主な理由である。実験に必要な消耗品の購入、学会出張の旅費に使用する予定である。
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