研究課題
1999年茨城県東海村のウラン加工施設での高線量被ばく事故では、失われた造血機能回復のため骨髄移植が実施された。同じ作用を持つ臍帯血移植は成熟T細胞をほとんど含まないことから拒絶反応が起こり難いという長所がある反面、一人の妊婦から得られる臍帯血では一人の患者の需要を満たせないという短所がある。したがって、臍帯血移植を実用的な治療法として確立するにはこの数的限界を克服する必要がある。複数の臍帯血を混合して移植する混合臍帯血移植はすでに国内外で開始されているが、移植後の解析は患者の臨床的な経過観察にとどまり本格的な学術的検証は行われていない。本研究で申請者は被ばく医療に特化した混合臍帯血移植を念頭にその有効性をマウスモデルで検証し、次のような興味深い研究成果を得た。当初、致死量放射線照射した移植マウスと同じ系統由来の臍帯血が含まれた混合移植の方が高い生存率を示すと予想していたが、実際には全く別系統由来の臍帯血を混合移植した方がはるかに生存率は高く、しかもその生存マウスの造血機能はその生存マウス自身のもので回復していた。白血病治療のように新たな造血系と入れ替える必要のない被ばく医療にとって、被ばく者自身の造血系が回復することは有益と考えられる。また末梢血の内容を調べたところ、すべての血球細胞の再構築が確認できた。すなわち別系統由来の臍帯血移植ソース(組織適合性抗原一致を必要としない)が使用できることが、この被ばく医療に特化した混合臍帯血移植の特徴と結論づけられた。
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The Hirosaki Medical Journal
巻: 66 ページ: 162-175
Current Pharmaceutical Biotechnology
巻: 17 ページ: 190-199
10.2174/1389201016666150826125331