研究課題
本研究では被ばく者の線量評価に用いられている手法の一つである未成熟染色体凝縮(Premature Chromosome Co ndensation: PCC)法についてFISH法を併用し、二動原体染色体(dicentric: dic)の頻度を解析する事により、低線量 から高線量まで広範囲に適用できる、正確かつ迅速な生物学的線量評価法の確立を目的とする。平成26年度は種々の放射線量 (0、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25 Gy)のγ線で照射した末梢血リンパ球をPHAで 処理し、48時間培養後、PCC処理により染色体標本を作製、動原体及びテロメアに特異的なPNAプローブ を用いてFISHを行い、二動原体染色体の出現頻度を解析した。解析手法としてテロメアと動原体の両領域を同時に染色するよりも、動原体のみをFISH法によって染色した方がより明瞭に解析ができることが明らかとなった。また、二動原体染色体の出現頻度は0-5Gyの線量では放物線を描くのに対して、5-25Gyの線量では直線的に増加することが明らかとなり、反応曲線が異なることが示された。さらに二動原体染色体の出現頻度はギムザ染色よりもFISH法を用いたほうがより高精度に解析できることが明らかとなった。PCC-dic法とPCC-ring法を比較すると、PCC-dic法に動原体のFISH法による解析法を併用した場合、より広範は線量評価が可能となることが示唆された。現在、解析サンプル数を増やし、最初に観察された反応現象が普遍的なものか否かの検証を行っている。
3: やや遅れている
これまで研究結果を元に、本年度は末梢血を広範囲にわたる種々の線量のγ線で照射し、ギムザ染色法、PCC-dic+FISH法、PCC-ring+FISH法など様々な染色法により解析を行ってきたが、各線量における解析細胞数が膨大な数になることから、染色体異常の解析に追われ、PCC現象のメカニズムとりわけPCC誘導に関わる遺伝子発現の解析まで追いついていない。
今後はこれまでの研究成果を踏まえ、いかなる線量の被ばく事故にも適用可能な染色体線量評価法を確立する。また、染色体の凝縮とりわけPCC誘導時に細胞に起こる遺伝子発現について解析し、PCCのメカニズムの解析を行う。
PCC誘導に伴う染色体凝縮関連遺伝子の発現解析が遅れているため。
平成26年度の計画していた遺伝子発現の解析を実施する
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