研究課題
高線量の放射線被ばく事故では細胞周期M期での染色体解析が困難となる。従って、高線量被ばくが疑われる場合には、オカダ酸やカリクリンAを用いたPCC法による環状染色体(ring)の解析法が用いられているが、実際の被ばく事故においては、通常(5Gy以下)のdic法とPCC-ring法の2つの培養手法を用いなければならない。もし、5 Gy以下の被ばくでもPCC法が適用可能であるならば、いかなる被ばく状況でも1つの手法で対応が可能となる。本研究ではオカダ酸およびカリクリンA処理の時間、濃度の検証を行い、ringが検出しやすい最適条件を求めると同時に、動原体プローブを用いたFISH法を併用し、dicの解析を行い、広範囲にわたる被ばく線量推定にPCC法が応用可能かどうかを検討した。ヒト末梢血リンパ球を対象として、オカダ酸およびカリクリンA処理の時間、濃度をそれぞれ調整し、PCC頻度と染色体の長さにより至適処理時間と濃度を求めた。また、γ線照射(0~25 Gy)を行ったリンパ球において、ギムザ染色によるPCC-ring法とFISH法によるPCC-dic法を用いて,G2/M期におけるringとdicの頻度から線量評価法の比較を行なった。その結果、至適条件の決定では、オカダ酸は1000 nM 60 分処理、カリクリンAは25 nMまたは50 nM 30分処理が最適条件であった。一方、PCC-ring法とFISH法によるPCC-dic法の比較実験では、ギムザ染色によるPCC-ring法は0~15 Gy、FISH法を用いたPCC-dic法は0~25 Gyまでの線量推定が可能であることが示唆された。従来のPCC-ring法は5 Gy以下でも線量推定が可能であり,またPCC-dic法でも低線量域から高線量域までの線量推定に適用できることが示唆された。PCC-dic法は放射線事故などにおける被ばく線量のスクリーニングとしての応用が期待できる。
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Scientific Reports
巻: 5 ページ: 13882
10.1038/srep13882