研究課題/領域番号 |
25461872
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
香田 渉 金沢大学, 大学病院, 講師 (30401920)
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研究分担者 |
松井 修 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任教授 (10019961)
南 哲弥 金沢大学, 大学病院, 講師 (60436813)
吉田 耕太郎 金沢大学, 大学病院, 医員 (30645130)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌 / インターベンショナルラジオロジー(IVR) / 肝臓 / ミクロ粒子 |
研究実績の概要 |
再生医療、免疫療法、遺伝子治療、そして化学療法に応用可能な「IVR技術を利用した効率的、非侵襲的delivery system」の開発が望まれる。そのための基礎的研究として、本研究課題では経動脈的投与とcarrierとして期待されるミクロ粒子等を利用し、①経動脈的投与における粒子および溶出薬剤等の分布ならびに動態を明らかにする、②血管作動性物質等の作用により粒子や溶出薬剤等の組織内分布をコントロールし腫瘍への選択的集積効率を向上させる、ことを目的としている。 今年度は、まず家兎肝に対する経動脈的アプローチの実験系の確立を試みた。家兎の鼠径部を展開してカテーテルを挿入し、肝動脈に安定して導入するためのデバイスや手技について検討し、正常肝における球状塞栓物質の肝動注も行った。結果として、カニュレーションの手技は確立されたが、その後フリーフロー下で塞栓物質の注入を行うには肝動脈分枝レベルからの注入は不安定であり、一個体で多条件の組み立てを安定的に施行することは困難であることがわかった。また、ミクロ粒子の注入により容易に肝梗塞が発生することがわかり、その注入量の設定が重要であることもわかった。 経時的生体内画像追跡用あるいは薬剤、細胞等のcarrier用の粒子を作成するため、臨床応用されている球状塞栓物質、ゼラチン粒のほか、デキストラン粒子、セルロース粒子、ナノ化リピオドールシェル、熱応答性磁性ナノ粒子などについて実験系への応用可能性についても検討した。細胞を担う物質に関しても新しい多孔性粒子が必要と考えられ入手したが、血管内投与可能な状態で細胞を生着させるための実験系を立ち上げるまでには至らなかった。 研究分担者により血管透過性などを評価するための小動物用超音波エコーシステムの活用も進めており、今後の血管作動性物質の作用や溶出薬剤の動態評価に有用であろうと判断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は動物実験への応用可能な経時的画像追跡用あるいは薬剤、細胞等のcarrier用の粒子の作成を目指し、球状塞栓物質、ゼラチン粒のほか、デキストラン粒子、セルロース粒子、ナノ化リピオドールシェル、熱応答性磁性ナノ粒子などについて実験系への応用可能性について検討した。細胞を担う物質に関して新しい多孔性粒子が必要と考え入手したが、いずれも完成には至らなかった。原因は経動脈的投与により末梢動脈に停滞すると思われる径数十~百数十μm程度で目的とする物質や細胞を安定して保持できる粒子を入手できなかったこと、家兎肝動脈へ球状塞栓物質を投与する実験により注入できる塞栓物質の量がかなり少量であることが判明し画像追跡が困難であることが予測されたこと、新しい多孔性粒子に血管内投与可能な状態で細胞を生着させるための実験系を立ち上げることが困難であったことがあげられる。 また、家兎正常肝およびVX2モデル家兎肝腫瘍に対する経動脈的投与による粒子の分布および動態についての経時的画像追跡および組織学的検討も計画していた。まず、家兎の鼠径部を展開してカテーテルを挿入し、肝動脈に安定して導入するためのデバイスや手技について確立した。次いで、正常肝における球状塞栓物質の肝動注を行ったが、フリーフロー下で塞栓物質の注入を行うには肝動脈分枝レベルからの注入は不安定であり、一個体で多条件の組み立てを安定的に施行することは困難であることがわかった。また、ミクロ粒子の注入により容易に肝梗塞が発生することがわかり、その注入量の設定が重要であることもわかった。動態追跡、VX2モデル家兎の使用については、上記の粒子の問題により実施できなかった。 研究分担者により血管透過性などを評価するための小動物用超音波エコーシステムの利用について検討し、血管作動性物質の作用や溶出薬剤の動態評価に有用であろうと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も動物実験への応用可能な経時的生体内画像追跡用あるいは薬剤、細胞等のcarrier用の粒子の作成を目指すが、粒子にこだわらずリピオドール乳化液の使用なども検討する。具体的には、薬剤とリピオドール混合液を血液中でナノ単位まで乳化させ、正常肝臓、腎臓から乳化液を注入し、血管造影、CTおよび切除標本にてリピオドールの分布を評価する。これにより乳化液としてのリピオドールの組織内での動態と安全性を評価し、carrierとしての可能性を評価する。 次いで、粒子あるいは乳化液を用いて、家兎正常肝およびVX2モデル家兎肝腫瘍に対する経動脈的投与によるcarrierの分布と動態についての経時的画像追跡および組織学的検討を行う。さらに、家兎正常肝およびVX2モデル家兎肝腫瘍に対して血管作動性物質を経動脈的に作用させながらcarrierを経動脈的投与し、その分布と動態についての経時的画像追跡および組織学的検討も行う。いずれも画像による経時的な動態追跡が困難である場合には、組織学的検索の対象数を増やし、経時的な変化を明らかにする。また、小動物用超音波エコーシステムなどを利用して、carrierあるいは血管作動性物質を変化させた際のcarrierの分布、血管透過性、溶出薬剤の動態などを評価する。 以上により、carrierあるいは血管作動性物質などの違いによる腫瘍および正常肝実質の微小環境への影響と動態変化を明らかにし、肝腫瘍の治療に有効なdelivery systemとしての経動脈的投与法の開発に努める。なお、これらの実験については、金沢大学血管分子生理学講座の指導と協力も仰ぎながら遂行していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は動物実験への応用可能な経時的生体内画像追跡用あるいは薬剤、細胞等のcarrier用の粒子の作成を目指したが、完成には至らなかった。原因は、経動脈的投与により末梢動脈に停滞すると思われる径数十~百数十μm程度で目的とする物質や細胞を安定して保持できる粒子を入手できなかったこと、家兎肝動脈へ球状塞栓物質を投与する実験により注入できる塞栓物質の量がかなり少量であることが判明し画像による追跡が困難であることが予測されたこと、新しい多孔性粒子を入手したが血管内投与可能な状態で細胞を生着させるための実験系を立ち上げることが困難であったことがあげられる。そのため、予定していた新しいcarrierとなる粒子を用いた実験を行うことができなかったため、この実験で使用する物品の購入を控え未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度も引き続き動物実験への応用可能な経時的生体内画像追跡用あるいは薬剤、細胞等のcarrier用の粒子の作成を目指すが、リピオドール乳化液の使用なども検討しcarrierの候補を増やす。また、今年度の実験で小動物用超音波エコーシステムによる血管透過性の評価が可能であることなども判明したことから、従来より使用可能な球状塞栓物質などを用いたin vivoでの実験系による評価も可能であると考えられる。したがって、今年度および来年度に予定していた実験あるいはその代替の実験を遂行することは可能であり、今年度の未使用額および当初より次年度予定していた経費について、次年度は予定通り使用されるものと考えている。
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