日本で開発された鉛を含まない金属機能紙の特性を解明し、医療への応用が目的であった。JIS規格に基づき、機能紙の引っ張り試験、耐久性、防水性、通気性等の試験を行い、特性を明らかにした。また、JIS4501に準じX線100kVp、150KVp、Cs137のガンマ線で鉛当量試験を実施、金属機能紙10枚では、それぞれ0.48 mm ± 0.02 mmPb (100 kV)、0.51 mm ± 0.02 mm (150 kV)であり従来の鉛板の代替として使用できることを示した。放射線診断領域への応用として、インターベンショナルラジオロジー時に生ずる散乱線からの術者被ばく低減を実証した。放射線治療への応用しては、金属機能紙を治療用のX線および電子線のコリメートに応用した。治療用の電子線に対しては、一般的にコリメートには鉛や低融点鉛を遮蔽材として用いているが、これらの遮蔽材は加工が困難であることや,鉛の毒性による鉛害などの問題点を抱えている。タングステン機能紙が低融点鉛の代替えになるか、4、6、9 MeVの電子線の遮蔽率を求め、治療に必要な深部電離量百分率(percentage depth ionization: PDI)、 軸外線量率(off-center ratio: OCR)、表面線量(surface dose)の検証を実施。機能紙を用いた放射線防護用のプロテクターの試作品は完成し、現在臨床現場で試用中である。
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