研究課題
本年度は昨年度までに行ったマウスの腹部照射における腸炎前後でのα-defensinの変化を検討した。その結果、腹部へ8Gy照射を行った3日後で照射前よりも糞便中のα-defensin量の有意な減少を認めた。併せて測定していた血中のシトルリンには明らかな変化はなかった。病理組織像においても照射後3日と8日において陰窩における細胞の空胞化といった形態異常を認めることができた。また、腸内細菌叢についても検討を行ったところ、照射後3日目でα-defensinと腸内細菌叢の一種であるFirmicutesとの間に有意な負の相関が認められた。また、有意ではないものの、Bacteroidesの照射前後での減少傾向も認められた。この結果は、照射後のα-defensinの減少により腸内細菌叢の変化が生じている可能性を示唆するものである。これらの結果から、放射線腸炎の評価測定として、便中α-defensinの経時的測定が有用であることが示された。臨床上の応用を検討した研究として、骨盤内照射を行う症例の集積を行ったが、解析に必要な十分な症例数が集積できず、検討は行えなかった。陽子線治療の骨盤内照射における線量低減の可能性については、X線放射線治療の強度変調放射線治療と比較して骨髄の線量低減が可能となり、それにより血液毒性の低減が可能であることは示されたが、明らかな腸管線量の低減には至らなかった。
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