研究課題/領域番号 |
25461900
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
真里谷 靖 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (20239148)
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研究分担者 |
高井 良尋 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50107653)
對馬 惠 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (90592254)
吉田 英樹 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (20400145)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 転移性脳腫瘍 / 放射線治療 / 脳血流機能画像 / 認知機能 / 全脳照射 / 脳有害事象 |
研究実績の概要 |
平成26年度には、転移性脳腫瘍患者に対する放射線治療患者を対象として、神経学的所見、臨床所見、認知機能検査(MMSE)、MRIによる治療効果判定、脳血流機能画像による局所脳血流解析などを昨年度と同様に継続したと共に、少数ではあるが生存患者について長期の経過観察を行うことが出来た。 その結果、昨年度指摘した内容に若干の所見を追加することが可能となった。即ち、①治療開始前に脳転移病巣に相応する局所脳血流低下があり、同所見とMMSEスコアに殆ど矛盾がなかったことは昨年度と同様であったが、転移巣が小さな場合にはMMSEの低下が目立たないケースが若干数存在していた。②治療開始前に血流低下がみられなかった領域において新たな血流低下が出現するケースが複数あり、特に全脳照射施行例では脳全体に及ぶ血流低下がみられた。しかし、経時的にみていくと、同所見に変化のあったケースが1例のみだが存在した。③このケースでは、一旦認知症のレベルまで低下したMMSEスコアが正常レベルにまで改善を示した。これは、局所脳血流低下とこれに伴う認知機能レベル低下は必ずしも不可逆的な変化ではないことを示唆する所見であり、臨床のみならず機序的な面からも非常に興味深い症例と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度得られた結果について、症例を若干数重ねて解析を進めることが出来、さらに新たな知見も得られた。即ち、高齢の患者を中心とした全脳照射患者における、転移巣とは関連せずに瀰漫性に散在する局所脳血流低下所見とこれに伴う認知機能レベルの低下が、引き続いて観察された。一方そのなかで、いったん局所脳血流低下とMMSEスコア低下を示した患者の長期経過観察において、これらの変化が必ずしも不可逆的でないことを示唆する所見が認められたことは、全脳照射患者におけるダメージとその修復のメカニズムを考える上で重要な鍵となる可能性につながり、さらなる検討と考察を加える価値があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
症例数をさらに重ねていくと共に、ある程度以上の長期生存患者を出来るだけ短い間隔でフォローし、認知機能や神経所見の経時的変化を細かく追っていく。特に、いったん局所脳血流低下やMMSEスコア低下を示したケースのその後の臨床経過を追うことが重要となる。 一方、次年度後半にはこれまで蓄積されたデータをまとめ、国際的なレベルを含めた学会発表および論文投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、研究に用いていた施設のひとつに検査機器トラブルなどがあり、十分な数の対象症例を確保できなかった。このため、解析に関連する費用が予想よりも若干少額となった。また、これに伴って、予定していた学会発表や論文投稿も次年度に繰り越す結果となり、次年度使用額が生じる理由となった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度途中に研究施設の追加などを行い、症例数の確保について対策を講じたことから、対象症例の不足に関連する問題は解決されると考える。また、次年度は最終年度であることから、国内、国際学会における発表、論文投稿などを積極的に予定しており、これらを考慮すると発生した次年度使用額の消化に関しては問題がないと判断している。
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