研究課題
最終年度である平成27年度には、転移性脳腫瘍患者に対する放射線治療施行患者を対象として得られた、神経学的所見ほか臨床所見、認知機能検査(mini mental state examination)、MRIないしCTよる治療効果判定、脳血流SPECTおよび3-dimensional stereotactic surface projections(3D-SSP)による脳機能画像所見を詳細に解析することができた。最終的には52-83歳の12症例を対象として、転移性脳腫瘍を有するがん患者の脳機能に放射線治療が及ぼす影響に関する検討を行った。用いた放射線治療は、全脳照射、部分脳照射および定位脳照射であった。治療開始前、加えて可能な限り治療終了2-4ヶ月後に上記の諸検査を反復して行った。この結果、1)治療開始前に脳転移病巣に合致する局所脳血流低下があり、同所見とMMSEスコアの間にはほぼ矛盾が認められなかった。転移病巣が小さな場合には、MMSEスコアの低下が目立たないケースが存在した。2)治療開始前に血流低下がみられなかった領域において新たな血流低下が出現したケースが複数存在し、特に全脳照射施行例では脳全体に及ぶ瀰漫性、散在性の局所脳血流低下が4例中2例(50%)にみられ、これらは高齢者であった。3)しかし、全脳照射後長期的にフォローできた1例では、正常レベルから一旦認知症のレベルにまで低下したMMSEスコアがその後再び正常レベルにまで回復を示した。これは、局所脳血流低下とこれに伴う認知機能レベル低下は、必ずしも不可逆的な変化ではないことを示唆する所見であり、臨床面のみならず脳機能ダメージとその回復の機序からみても興味深いケースと考えられた。放射線治療は局所脳血流を低下させるリスクを有するが、認知機能の変化については個々の患者間でのバリエーションが大きく臨床経過も多彩であった。
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