研究課題/領域番号 |
25461901
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
熊田 博明 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30354913)
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研究分担者 |
櫻井 英幸 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50235222)
榮 武二 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60162278)
松村 明 筑波大学, 副学長 (90241819)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 治療計画 / 中性子法則療法 / モンテカルロ法 / マイクロドシメトリ / 粒子線治療 / 中性子線 |
研究実績の概要 |
中性子捕捉療法(BNCT)用の治療計画システムとして、細胞レベル、DNAレベルのシミュレーション計算による放射線影響解析技術(マイクロドシメトリ技術)と、これまで開発したモンテカルロ治療計画技術を結合し、次世代型のモンテカルロ治療計画システムのプロトタイプを開発する。 平成25年度までにマイクロドシメトリ技術を組み込むベースとなるBNCT用治療計画システム:ツクバプラン(仮称)の開発と性能検証を開始した。平成26年度は平成25年度に引き続きツクバプランの検証を実施した。特に核データを米国製のENDF/Bから日本製のJENDL4.0に変更したことから、この核データ変更に基づく線量評価結果の差異について評価を行った。また、これまではBNCTの線量評価では無視されていた生体中の酸素と炭素と中性子との反応で生じる線量についても評価を行い、全体線量への影響を評価した。これらの評価結果は、フィンランド・ヘルシンキで開催されたBNCTの国際学会:ICNCT16で発表を行うとともに、論文投稿も行った。また、日韓合同開催された医学物理学会でも破票を行った。 ツクバプランの検証においては、筑波大学で開発中の加速器BNCT治療装置での検証だけでなく、実際にBNCTが実施されている京都大学原子炉実験所の研究用原子炉KURにもツクバプランを導入し、同原子炉でのBNCTの線量評価を開始した。また、現在整備が進められている福島県の総合南東北病院にもツクバプランを適用して多施設間での検証を行う準備を進めている。この他の施設へツクバプランを導入する場合、大型の並列計算機を導入することが困難であるため、スタンドアロン型のデスクトップ形式並列計算機にツクバプランをインスールし、同計算機で一連の線量評価を実施できる環境を構築した。さらに筑波大学に設置されている大型計算機でも線量計算を実行するための環境整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は、BNCT用治療計画システムを完成し、このシステムにマイクロドシメトリ技術を組み合わせて、計算のみで生物学的効果比を考慮した等価線量を導き出すシステムの試作機の開発である。本開発の主な開発項目は、①BNCT用治療計画システム:ツクバプランの開発、②モンテカルロコードPHITSへのマイクロドシメトリ技術の組み込み、③ツクバプランにマイクロドシメトリ技術を内挿したPHITSベースモンテカルロコードの組み込み、④ツクバプランの検証、である。平成26年度までに、①、②、③及び④のマイクロドシメトリ技術を除くシステム全体機能の検証までを達成した。全体工程として70%以上の達成率と考えており、順調に開発を進めているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究開発の最終年度である平成27年度は、まずこれまでに実施してきたBNCT用モンテカルロ治療計画システム:ツクバプランの全体システムとしての検証を実施する。特に筑波大学で開発整備中の加速器ベースBNCT治療装置が本年度中に完成し、中性子ビームを発生できることから、この施設を使ったファントム実験を実施して、同実験をツクバプランで再現してファントム内の中性子束分布を算出し、実測データと計算値との比較による検証を行う。また、システムの多施設間での検証も並行して実施する。本年度は、国立がん研究センターにもシステムを導入して検証を実施する計画である。これにより国内のすべてのBNCT施設に対してツクバプランを試験導入することができるため、将来的にツクバプランをBNCT用治療計画システムの日本の標準システムとして確立することを目指す。各施設から得られた情報をフィードバックし、ツクバプランをBNCT用治療計画システムとして完成させる。 マイクロドシメトリ技術の検証についても、筑波大学のBNCT治療装置を使った細胞照射実験を実施する計画であるため、この細胞照射実験から得られた細胞生存率、生物学的効果比(RBE)等のデータとツクバプランのマイクロドシメトリ機能によって算出された数値との比較を行い、同機能の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では平成26年度に物品費を用いて線量計算用並列ワークステーションを整備する計画であったが、本研究を通じて大学の大型計算機を共同利用できることとなっため、当年度内にワークステーションの整備を行う必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の大学の大型計算機での検証結果を踏まえて、平成27年度に並列計算機を整備するものとする。
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