BNCTにおける生体内線量分布計測システムの基盤技術開発において、平成25-26年度を通じ、エネルギー分解能と結晶シンチレータ厚依存性の結果よりCsI型結晶ブロックと16x16チャンネル光電子増倍管を購入し、抵抗チェーン技術を利用した読出し回路、CsI型試作器を設計・製作した。データ収集システムを開発した。結晶内の集光モデル計算ソフトを開発し、γ線位置検出機能の非一様性が抵抗チェーンと結晶内の光反射に起因していることを確認した。RI線源による一様なバックグラウンド(BG)データを用いた座標変換(写像)補正法を開発し、補正後のγ線検出位置分布が一様であることを検証した。γ線コリメータの設計・製作、PHITSコードを用いた治療時のシミュレーションの結果、熱中性子線束が患者体外では照射口からの距離に依存せず、毎秒1 cm2当たり2メガカウント程度であること、照射室壁・遮蔽壁での反射寄与が50%増程度であるため検出器の全面遮蔽が必要であることが示唆された。これらの成果を学会で発表した。最終年度では、製造可能な最大サイズ5.5 cm x 35 cm x 35 cmの天然LiF熱中性子遮蔽体を製造した。また、478 keV信号γ線のBGγ線に対するS/N比を最適にするため、多種多様のフィルター機能をオンラインで構築し、パラメータ設定、各フィルターON/OFF、S/N比確認、結果の能動的な反映を可能にする解析ソフトを開発した。しかし、H27年度中に予定した中性子ビーム試験による性能評価はいばらき中性子医療研究センターの熱中性子設備利用開始の遅延により実施できなかった。今後、性能評価試験の実施と成果発表、及び、より高性能の結晶(LaBr3)を用いた検出器の開発により、極度に高い中性子・γ線BG強度下のBNCT治療における世界初のオンラインホウ素線量決定システムの実用化を目指す。
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