研究課題
基盤研究(C)
平成25年度は、放射線被ばく後のDNA 過酸化物生成量を解析して放射線障害を推定するとともに当研究室にて研究されている「培養担子菌抽出免疫賦活物質」の放射線防護効果の基礎的な検討を実施した。DNA 過酸化物の初期生成物である8-OHdG(8-hydroxy-deoxyguanosine) につい4.5Gyの全身照射マウス血漿を測定した結果、照射5~7日で5.12~5.16ng/ml濃度で検出された。組織標本(胸腺)からの免疫染色では8-OHdG(8-bromo-deoxyguanosine) では、照射3日、5日後で陽性像が認められた。脾臓の標本では、照射5日、7日後に陽性像がみられた。炎症初期診断の新たな酸化ストレスマーカーとして有意義と考えられる8-BrdGでは、胸腺標本で照射3日後に陽性像が確認され、脾臓標本からは、照射1日および3日後の早い時期に陽性像が認められた。また、「担子菌抽出物」の放射線防護効果については、8.0Gy全身照射(LD50/30線量)マウスに対して明らかな生存率の上昇が認められた。すなわち、マウスの生存率は「担子菌抽出物」の投与開始時期によって異なり、照射単独群(生理食塩水投与:生存率42%)に対し、「担子菌抽出物」の照射3日前投与開始群(生存率67%)および照射直後投与開始群(生存率75%)より、照射3日後からの投与開始群(生存率83%)で最も生存率が高い結果が得られた。これらの結果から、「担子菌抽出物」の放射線防護機序はラジカルスカベンジャーとしての働きではなく、照射により傷害を受けた細胞の回復または修復に作用する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
1.DNA 過酸化物生成物(8-OHdGおよび8-BrdG)の測定方法と組織標本からの免疫染色法が確立された。2.「担子菌抽出物」の放射線防護効果をマウスの生存率上昇効果で判定され、その成績は再現性があった。
1. 放射線被ばく後のDNA 過酸化物生成物(8-OHdGおよび8-BrdG)を低線量の被ばくにおいても再現性よく測定、もしくは判定し得る可能性について詳細に解析する。2.「担子菌抽出物」の放射線防護効果について高線量被ばくからの回復機序解明のみならず、放射線に感受性の高いリンパ球や精巣に対する低線量被ばくと防護効果発現の可能性について検討する。
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BMC Cancer
巻: 13 ページ: 499
Radiat Oncol.
巻: 8 ページ: 76