研究課題/領域番号 |
25461907
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
作美 明 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (30360556)
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研究分担者 |
芳賀 昭弘 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30448021)
白石 憲史郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40447404)
山下 英臣 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70447407)
中川 恵一 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80188896)
井垣 浩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90361344)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コーンビームCT画質改善 / 画像誘導放射線治療 / 実線量分布 / 治療中の腫瘍移動・変形 / 逐次放射線治療 |
研究概要 |
治療加速器に取り付けられたコーンビームCT画像(CBCT)で誘導し腫瘍に高精度に放射線を照射する画像誘導放射線治療において画質の向上をあげることにより治療精度を高めることが可能となる。しかしながら得られるCT像は機械的構造上体内散乱によるノイズにより画質が劣化、特に全骨盤を取得できる大きさまで拡大すると画質劣化が著しい。本研究では、CBCTのノイズを計算フィルター、及びコリメータによる物理フィルターを用いて通常のファンビームCT並に改善することを目的とする。本年度は以下のことを実施した。 (1) 鉛ブロックを設置しFOVを変化させることによって照射野外の散乱の変化を測定し、全体散乱を実験的に見積もった。コリメータで絞った状態でも電流値・測定時間を上げると空気の部分が飽和するだけではなく、鉛を8mm用意し減衰率を1/1000以下にした状態でも、遮蔽部分のベースラインが大幅に増大することがわかった。これはフラットパネルディテクタがCsIを用いた間接式検出器であり、サチュレーションやハレーションがシンチレータ内で強く起きていること、また自動で行われている強度調整によるものと考えられる。 (2) モンテカルロシミュレーションによる散乱カーネルの検証を行い、単エネルギーでのモンテカルロ法で見積もった散乱カーネルをCT再構成計算に組み込むと画質が改善することがわかった。しかし上記のベースラインシフトやハレーションの効果のため、CT画像のウィンドウ・レベルは以前狭く、また患者間のCT値の揺らぎ、本来CT値は水ならどのモダリティでも0を示さないといけないのに対し、開発中のCBCTアルゴリズムでは患者によって揺らぎがある。またより詳細なX線スペクトラムを知るために機械のモンテカルロ用図面を取得し、現在カーネル作成中である。 (3) 得られた結果を元に学会発表を行った。また論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は鉛コリメータを用い、関心領域(FOV)の幅を変化させることにより散乱線の影響を実測した。CBCTで使われるエネルギーは120kVで半値幅が0.3mmで、1/1000以下にするためにコリメータの厚みを8mmとして測定した。これは元来CBCTの関心領域用のフィルター厚とほぼ同じ厚みである。コリメータの幅をファンビーム程度に絞るとこの機械でも散乱の影響がすでに見られていないことは実証済みである。そこでコリメータ幅を可変させて散乱成分の測定を行った。特にM10と呼ばれる前立腺の幅程度の10cmのFOVとM20と呼ばれる20cmの幅の場合、散乱による画質劣化が問題となっており、実際、散乱線のコンタミネーションは15cmより大きなFOVで観測されることがわかった。散乱線の影響を計算しそれを因数分解するフィルターを用いて水ファントム像のCBCTを再構成した結果、関心領域が大きい場合でも水ファントムについては画質改善が見られた。 また単色エネルギーにおける体内での散乱をモンテカルロシミュレーションにて求め、実験値と比較した。ベースラインが増える以外、散乱の影響によるコンタミネーション・画質劣化の結果が概ね一致したが、先に述べたとおり、電流・測定時間を上げていくに従って完全に遮蔽した部分でも測定値のベースラインの増大が観測された。これはCsIシンチレータを用い測定している結果、シンチレータ内の飽和やハレーションによるものと推測される。このハレーションの影響、飽和によるダイナミックレンジの低下がCBCT画像の画質劣化に大きな影響を与えていることが推察される
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今後の研究の推進方策 |
実際のエネルギースペクトル、ハレーションによる影響を加味することによって画質改善が見込まれる。特に関心領域(FOV)を広くするためにパネルを移動させる際の散乱による影響をかなり低減できるのではないかと見込まれる。手法として、臨床で使っているフィルターの空気部分におけるハレーション、飽和の影響を測定し、マッピングすることによってハレーションの影響、サチュレーションの影響を補正するフィルターを開発する。 またCBCTのモンテカルロシミュレーション用の図面を手にいれて現在真のスペクトルを計算中である。真のスペクトル、特に低エネルギーの体表面での影響が加味でき、この影響を因数分解できることによって更に画質改善が見込まれる。そして過去、同日にCTとCBCTを取得した患者を中心に再構成し、専門医による評価、改善をおこなっていく。しかしながら散乱の対象物を水と仮定するので空気や金属などによるアーチファクトの影響が今後の課題である。 まとめると次のようになる。 (1)鉛コリメータの形状を改良しファントム実験にてサチュレーション、ハレーションの強度に対する影響を見積もる。(2) 実際の形状を考慮したモンテカルロシミュレーションから得られたスペクトルによる散乱線影響、特に表層の散乱の影響を見積る。(3)得られた補正ファクターを再構成アルゴリズムに内蔵しまず水ファントムにおいての画質を改善する。 (5) 治療中や治療前に取得した患者のCBCTを再構成し、通常のCTと比較する。
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