本研究では、食道癌における放射線耐性のメカニズムを解析し、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬であるValproic acid (VPA)の放射線耐性克服効果を基礎的に検討した。その結果、放射線照射が食道癌細胞の上皮間葉転換(EMT)と癌幹細胞様形質を誘導し、癌細胞の放射線抵抗性や細胞浸潤能や遊走能が亢進した。VPAは放射線照射による食道癌のEMT変化と癌幹細胞様形質の獲得を阻止し放射線性浸潤・遊走能亢進を抑制するとともに、二重鎖切断修復酵素の阻害作用により放射線感受性を増大させ、放射線耐性克服効果を示すことが示唆された。
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