頭蓋内血管奇形症例に対する治療法のなかで最も低侵襲であり、適切な適応判断により手術摘出の代替治療となる定位放射線照射(以下STI)のさらなる低侵襲化、周術期のリスク軽減、安全性向上のために有望であるマスク固定でのフレームレスSTIの至適運用法の確立、精度向上、普遍化・一般化・汎用化のための検討を進めた。ノバリスTxシステムでの基礎的検討と臨床適用を踏まえ、別システム(エレクタシナジー)における臨床適用を含む再現性の確認とともに一層の精度向上のための問題点の抽出、その解決法について検討した。適切な標的体積の3次元範囲決定に有用である3次元回転血管造影画像(3DRA)の治療計画への統合について画像融合の精度の不十分さが問題であったが、別の治療計画支援ソフトの導入によりMRIを含む総合的な画像融合の精度向上が可能となった。1例のみにとどまったものの同システムを用いて臨床適用し、高い治療精度にて施行できた。治療計画法に関し線量分布向上のためインバースプランを導入しその有用性について検討した。STIに至適な物理生物コスト関数の適切な組み合わせを明らかにした。経動脈的塞栓術先行例など組織組成の異なる場合の線量計算精度について、従来簡素な方法が主体であったが、最終年度にはモンテカルロ法を用いた線量計算を導入し、頭蓋骨近傍での影響を含めた精度向上を行った。CTアーチファクトの適切な処理が課題として残った。本治療の精度管理に関して、多軌道回転照射の特性を生かし治療途中にも適宜精度確認を取り入れることで1回照射においてもフレーム固定と遜色ない精度が担保可能であることを確認した。フレームレスSTIは血管奇形例に対する根治的治療法として他の治療法の追従を許さない一層の低侵襲化、安全性、有効性、普及と技術の均てん化を担保しうるSTIの今後の中心的な照射技術になると考えられ、その基盤となる成果を得た。
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