研究課題
【~平成26年度】マウスに還元型コエンザイムQ10を経口投与することによって、放射線照射による腸管障害が減弱することを確認した。その際、小腸絨毛の細胞内でのアポトーシスが減少し、活性酸素発生が放射線照射単独に比べて減弱しているという結果が得られた。また、還元型コエンザイムQ10が正常組織の放射線防護効果を持つ一方で、腫瘍への放射線治療の効果を低下させないか実験を行った。その結果、本薬剤の投与によって腫瘍細胞内では正常細胞とは反対に活性酸素量が上昇し、細胞増殖能は抑制されることが観察された。次いで、還元型コエンザイムQ10投与後のマウス体内薬物分布について測定し、小腸内・小腸組織・血漿のいずれにおいても薬物濃度の上昇が観察された。【平成27年度】腸管内の薬物動態を確認するため、溶媒であるコーン油と造影剤の混濁液を投与した後に、継時的に腹部CT撮影を行い、投与後1~6時間まで小腸内に投与液が停留していることを確認した。次いで、放射線照射によっておこる生体内の代謝変化を網羅的に解析することで、腸管ダメージのバイオマーカーとなる代謝産物を同定することを試みた。マウスの腹部に放射線照射を行った後、腸管組織を採取しメタボリックプロファイリングについて解析した。その結果、抽出された約500の代謝物の中から非照射群と有意差のある約150の代謝物を同定した。さらに、同様の実験を繰り返し、すべての実験において同傾向の代謝変動を示す物質としてタウリンを同定した。体内におけるタウリンの代謝は腸管組織において、放射線照射後に一貫して減少していた。また、継時的、線量依存的にもタウリンの代謝が減少傾向であることが示された。このように一貫した代謝変動を示した代謝物はタウリンのみであることも解析により明らかになり、タウリンが腸管障害のバイオマーカーである可能性が示唆された。この結果は国際学会にて報告した。
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