研究課題
基盤研究(C)
腫瘍内で過酸化水素を徐放する新規放射線増感剤の開発に関する実験的研究として、以下の如く実験を行った。過酸化水素を徐放するために、過酸化水素をハイドロゲル(架橋ゼラチン)に含浸して用い、その効果を検証するためのマウス実験を施行した。実験には、C3H/Heマウスと同系のSCCVII腫瘍を用い、SCCVII腫瘍細胞を各マウスの右下肢皮下に注射して、その径が約6 mm大に成長した時点で実験を行った。各マウスの右下肢の腫瘍に対して、過酸化水素を含浸したハイドロゲル粒子あるいは従来のKORTUCとして過酸化水素+ヒアルロン酸を注射針で注入し、その24時間後、48時間後、72時間後に、各マウスの右下肢に限局して、Linacの6 MeV電子線 30 Gyの照射を行った。その結果、従来のKORTUCとしての過酸化水素+ヒアルロン酸では、マウス腫瘍に対する抗腫瘍効果(放射線増感効果)は、24時間後に照射した群では、明らかな抗腫瘍効果を認めたが、48時間後ないし72時間後に照射した群では、抗腫瘍効果を認めなかった。一方、過酸化水素を徐放する新規放射線増感剤の候補として、過酸化水素を含浸したハイドロゲル粒子では、マウス腫瘍に対する抗腫瘍効果は、24時間後ないし48間後、または72時間後に照射したいずれの群においても、明らかな抗腫瘍効果を認めた。このことは、実際の癌・放射線治療の臨床現場で、例えば、月曜日の午前10時に過酸化水素を含浸したハイドロゲル粒子を腫瘍に注射した場合、その放射線増感効果は、24時間後である翌日火曜日の午前10時の放射線治療はもちろん、48時間後の翌々日水曜日の同時刻の放射線治療および72時間後の木曜日の同時刻の放射線治療をも増感することとなり、96時間後の放射線治療を増感するかどうかは未だ不明ではあるが、概ね、週に1回の注射で済む、徐放性の新規放射線増感剤を開発することができた。
2: おおむね順調に進展している
腫瘍内で過酸化水素を徐放する新規放射線増感剤の開発に関する実験的研究として、以下の如く実験を行った。過酸化水素を徐放するために、過酸化水素をハイドロゲル(架橋ゼラチン)に含浸して用い、その効果を検証するためのマウス実験を施行し、概ね、週に1回の注射で済む、徐放性の新規放射線増感剤を開発することができた。今後は、この新規放射線増感剤の有効性をさらに検証するとともに、安全性についてもさらに検討を加え、実際の臨床応用へと発展させていく予定である。
今後は、この新規放射線増感剤の有効性をさらに検証するとともに、安全性についてもさらに検討を加え、実際の臨床応用へと発展させていく予定である。すなわち、ハイドロゲル(架橋ゼラチン)の種類を、何種類か選択し、それぞれについて、抗腫瘍効果(放射線増感効果)を検証する。その上で、最適なハイドロゲルを選択し、実際の癌・放射線治療へ応用すべく、必要な検討を加える。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Journal of Cancer Research & Therapy
巻: 1(9) ページ: 215-219
2052-4994.2013-32