研究課題/領域番号 |
25461916
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小川 恭弘 高知大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (90152397)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射線増感剤 / KORTUC / 過酸化水素 / ヒアルロン酸 / ハイドロゲル / 架橋ゼラチン / マウス / SCCVII |
研究実績の概要 |
腫瘍内で過酸化水素を徐放する新規放射線増感剤の開発に関する実験的検討として、以下の如く実験を行なった。過酸化水素を徐放するために、過酸化水素をハイドロゲル(架橋ゼラチン)に含浸して用い、その効果を検証するためのマウス実験を施行した。実験には、C3H/Heマウスと同系のSCCVII腫瘍を用い、SCCVII腫瘍細胞を各マウスの右下肢皮下に移植して、その径が約6mm大に成長した時点で実験を行なった。ハイドロゲルには3種類があるが、今回の実験ではPI5とPI9を用いた。 各マウスの右下肢の腫瘍に対して、過酸化水素を含浸した各ハイドロゲル粒子、シートあるいは従来のKORTUCとして過酸化水素+ヒアルロン酸を注射針で注入し、その24時間後、48時間後、72時間後に、各マウスの右下肢に限局して、Linacの6 MeV電子線 30Gyの照射を行なった。 その結果、従来のKORTUCとしての過酸化水素+ヒアルロン酸では、マウス腫瘍に対する抗腫瘍効果(放射線増感効果)は、24時間後に照射した群では、明らかな抗腫瘍効果を認めたが、48時間後ないし72時間後に照射した群では、放射線増感効果を認めなかった。 一方、過酸化水素を徐放する新規放射線増感剤の候補として、過酸化水素を含浸したハイドロゲル粒子では、マウス腫瘍に対する放射線増感効果は、24時間後ないし48時間後、または72時間後に照射したいずれの群においても、明らかな放射線増感効果を認めた。なお、腫瘍体積の変化をPI5群内で比較すると、最も腫瘍の成長抑制を示したのは、48時間後照射群であった。また、PI9群内で腫瘍体積の変化を比較すると、最も腫瘍の成長抑制を示したのは72時間後照射群であった。 以上より、今回の実験で使用したハイドロゲルは、PI5ならびにPI9ともに、ヒアルロン酸に代わって過酸化水素の支持体になり得ると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍内で過酸化水素を徐放する新規放射線増感剤の開発に関する実験的研究として、以下の如く実験を行なった。過酸化水素を徐放するために、過酸化水素を2種類のハイドロゲル(架橋ゼラチン)PI5(粒子状)ならびにPI9(シート状)に含浸して用い、その効果を検証するためのマウス実験を施行し、そのいずれにおいても注射後72時間後までの放射線増感効果を確認できた。したがって、概ね、週に1回の注射で効果が期待できる、徐放性の新規放射線増感剤を開発することができたといえる。今後は、この新規放射線増感剤の有効性をさらに検証するとともに、安全性についてもさらに検討を加え、実際の臨床応用へと発展させていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「ハイドロゲルを担体として過酸化水素を徐放する腫瘍内局注用の放射線/化学療法増感剤」は、現在、わが国はもちろん、欧米諸国への特許申請中であり、各国移行期限は8月15日となっております。その国際予備審査においては、新規性、進歩性、産業利用性ともにありと認められております。 日本科学技術振興機構(JST)の審査会は、本年の6月4日になる見込みであり、各国移行にかかる費用について、特許事務所に見積りを依頼中であります。
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次年度使用額が生じた理由 |
薬剤等の購入にあたりまして、少額の次年度使用額が発生致しました。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の薬剤購入等に使用させて戴く予定です。
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