研究課題/領域番号 |
25461925
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
高橋 健夫 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70241883)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重粒子線 / 炭素線 / 抗癌剤 / 増感効果 / 非小細胞肺癌 / アポトーシス / セネッセンス |
研究実績の概要 |
重粒子線(炭素線)は物理学的線量分布の良好さに加え、生物学的効果比がX線に対して2.5~3.0と高く、放射線抵抗性腫瘍に対して有効である。臨床試験の結果、頭頸部非扁平上皮癌や骨軟部腫瘍、悪性黒色腫など多くの放射線抵抗性腫瘍に対して良好な局所制御効果が報告されている。今後、炭素線治療の普及にはcommon cancerに対する適応拡大が求められ、局所進行癌の集学的治療の一環として炭素線治療の有効性を科学的に示す必要がある。本研究では死亡率第一位で治療成績が不良な肺癌において、治療成績向上を目的とした局所進行非小細胞肺癌に対する炭素線治療の有効性を確立するための基礎的研究を行っている。 ヒト非小細胞肺癌細胞を用いて炭素線照射と抗がん剤併用による細胞致死効果の増感性について検討した。炭素線照射が群馬大学重粒子線医学研究センターの炭素線治療装置を用いて、290MeV/μでSOBPビームを作成し照射実験を実施した。SOBPビーム中心のLETは50 keV/μmである。照射時に添加する抗がん剤は非小細胞癌の化学療法で汎用されているカルボプラチンとパクリタキセルを用いた。 ヒト非小細胞肺癌H460細胞を用いてin vitroにおける炭素線増感効果を実験的に検討した。カルボプラチン、パクリタキセルいずれにおいても炭素線照射単独に対して相乗効果を示すことが明らかとなった。細胞生残率曲線、細胞増殖能力測定いずれの解析法でも同様の相乗効果を示した。ヒト肺癌細胞に対して炭素線照射と抗がん剤が相乗効果を示すという報告はこれが初である。細胞死のメカニズム解析においてはアポトーシスとセネッセンスがX線照射時に比べ増加していた。今後さらび相乗効果のメカニズムについて解析を加える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭素線照射と抗癌剤のカルボプラチンならびにパクリタキセル併用で相乗的な増感効果がin virtoで認められることを初めて定性的・定量的に明らかにした。さらに相乗効果のメカニズムとしてアポトーシスとセネッセンスが関与している可能性を示した。今後の増感メカニズム解析につながる重要な知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果で、炭素線照射と抗癌剤のカルボプラチンならびにパクリタキセル併用で相乗的な増感効果がin virtoで認められることを初めて定性的・定量的に明らかにし、その機序にアポトーシスとセネッセンスが関与していることを見出した。今年度は相乗効果のメカニズムをさらに定量的に評価し、難治性癌である局所進行非小細胞肺癌に対する抗癌剤併用重粒子線治療の臨床プロトコールの作成が可能となる基礎的実験データを得ることが目的となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体は分子生物学的試薬の購入後に金額の端数が発生し、次年度繰越金が4148円ほど生じた。今年度はこの金額を加え、試薬の購入、実験器具の購入にあてる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の実験に要する実験試薬、実験器具、ならびにデータ解析用の関連物品の購入のために、今年度の予算に加味して残金が生じないように計画的に助成金を用いる。
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