研究課題/領域番号 |
25461927
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
笹井 啓資 順天堂大学, 医学部, 教授 (20225858)
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研究分担者 |
田部 陽子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70306968)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | heat-shock protein 90 / 放射線増感 / 低酸素環境 |
研究概要 |
分子シャペロンであるHsp 90は種々の遺伝子発現に重要な役割を担い、多くの癌細胞では過剰発現を呈している。腫瘍特異的な低酸素環境ではHsp90がHIF1を介する遺伝子発現に重要な役割を担っている。本研究はHsp90阻害剤を用いて、新たな低酸素細胞放射線増感剤を開発することを目的とする。 平成25年度では、すでに放射線増感効果が知られているHsp90阻害剤17DMAGについて、有酸素細胞との増感効果の追試を中心に行った。17DMAGの細胞毒性を常酸素下、低酸素下の2つの条件でMTT法を用いて検討した。両条件で明らかな細胞生存率の差は認めなかった。17DMAGの濃度依存性では100nMまでは濃度依存的に細胞生存率は低下したが、それ以上では変化がなかった。 17DMAGのIC50が約100nMであったので、この濃度を用いて放射線との併用効果を検討したが、明らかな増感効果を示すことができなかった。MTT法に問題がある可能性があり、標準法であるcolony法での検討を施行中である。colony法を用いた場合に用いる低酸素環境用のチャンバーの試作を行っている。 次年度はコロニー法により17DMAGを用いて常酸素環境および低酸素環境(酸素分圧0.5-1mmHg)でのHsp90阻害剤の放射線増感スクリーニングシステムを確立し、種々のHsp90阻害剤の放射線増感効果をスクリーニングするとともに同時に、効果の高い薬剤に関してフローサイトメトリー法にてアポトーシス、細胞周期への影響を検出する。さらにcyclin D1、Raf-1、Akt、mt-p53などの既知のHsp90標的分子の変化をウエスタンブロット法で検出するとともに、それ以外の遺伝子をmicro arrayで、蛋白LC-MS/MSレベルで検索し、RT-PCR、ウエスタンブロット法で確認することで、放射線増感のメカニズムを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
薬剤のスクリーニングシステム確立のため、標準的コロニー法ではなく、より簡便でかつ既に報告のあるMTT法による薬剤の放射線増感効果測定法の確立を試みた。MTT法でシステムの確立ができれば高速で薬剤のスクリーニングが可能と考えた。しかし、薬剤単独および放射線照射単独では治療効果を検出できたが、併用効果の検出は不十分であった。 このため、放射線と薬剤の併用効果を検出する標準法であるコロニー法によるシステムに変更を行ったことにより予定より研究の遅れが生じた。現在、コロニー法による研究が順調に推移しているので、今後は計画に従った研究が可能と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
コロニー法によるHsp90阻害剤と放射線との併用効果を薬剤を変えながら、常酸素状態および低酸素状態でテストする予定である。低酸素環境という概念は、放射線の効果を見る場合と遺伝子厚弦を見る場合により酸素分圧に大きな差異がある。今後、この差異による放射線増感効果をどのように評価するかが問題点として考えられる。 既に、酸素分圧2.5mmHg、および5mmHgでの培養が可能であり、この条件下で24時間培養した場合の効果を検討するとともに、放射線の酸素効果比が3程度になる酸素分圧0.5mmHg程度での放射線照射システム用のチャンバーを試作する。
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次年度の研究費の使用計画 |
MTT法を用いた放射線とHsp90阻害剤との併用効果スクリーニングシステムの構築が予定通り進まなかったため、薬品、器具の使用量が予定より少なかったことおよび、その結果として研究成果が十分でなかったため、研究発表用旅費および成果のまとめ用の人件費が支出不要であったため次年度使用額が生じた。 コロニー法によるスクリーニング体制を確立できたので、現在、薬剤およびプラスチック器具の使用が進んでいる。 国内学会での研究成果の発表も予定しているため、旅費、人件費の支出も行う予定である。
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