研究課題/領域番号 |
25461932
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
西村 恭昌 近畿大学, 医学部, 教授 (00218207)
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研究分担者 |
立花 和泉 近畿大学, 医学部, 講師 (00510984)
石川 一樹 近畿大学, 医学部, 助教 (10511016)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射線療法 / 低酸素領域 / ミソニダゾール / 再酸素化 |
研究実績の概要 |
放射線抵抗性の低酸素領域に集積する18F-ミソニダゾール(F-MISO)を用いた臨床研究を実施した。F-MISOを体重1 kg当たり7.4 MBq静脈内投与し、3時間後にPET/CT撮影した。この検査を、照射開始前および照射開始2週目(20Gy/10回前後)の原則2回行った。本プロトコールは、施設倫理委員会で承認を受けている。 平成26年度末までに合計20例(頭頸部癌8例、消化器癌9例、非小細胞肺癌2例、子宮体癌1例)の検査を行ったが、最初の10例を対象とし、低酸素領域の閾値を求めた。筋肉におけるF-MISO SUVmaxの平均値 ± SDは、1.25 ± 0.17であった。これをもとに1.60 SUV(平均 + 2SD)以上のF-MISO腫瘍内集積を有意な低酸素領域とした。さらに、腫瘍内F-MISO SUVmaxを筋肉のSUVmaxで割った値(T/M 比)も低酸素状態の指標とした。本結果は、J Radiat Res 54:1078-1084, 2013に掲載された。 合計20例のうち17例では治療前F-MISO-PETで低酸素領域を認めたが、上咽頭癌3例では治療前検査で低酸素領域を認めなかった。また照射開始2週目に2回目の検査の行えた16例中15例で、腫瘍内F-MISO SUVmax、腫瘍内のSUV値1.60以上の体積の比率、あるいはT/M 比のいずれかが低下した。本結果は、ヒト腫瘍で再酸素化現象が起きていることを示している。治療前SUVmaxと照射の一次効果の関係を検討したところ、腫瘍が消失しなかった群のSUVmaxは、完全消失群に比較し有意に高かった(2.42±0.45 vs. 1.76±0.34, p=0.005)。以上より、F-MISO-PETで腫瘍内低酸素領域の画像化が可能で、治療前F-MISO SUVmaxが一次効果の推定に役立つ可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
F-MISO/PETを行った最初の10例の検討で、撮像時期を3時間に決定し、1.60 SUV以上のF-MISO腫瘍内集積を有意な低酸素領域と定義することができ、J Radiat Res 54:1078-1084, 2013に掲載された。平成26年度では、頭頸部癌および食道癌を主な対象に検査症例数も20例にまで増加し、治療前F-MISO SUVmaxが一次効果の推定に役立つ可能性が示された。引き続き症例登録を行っており、今年度中にはF-MISO/PETの臨床的な意義が明らかにできるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現時点においてF-MISO/PETは、患者に直接的なメリットがなく、あくまで研究に協力していただいているので、検査同意の取得は必ずしも容易でない。平成26年度は、頭頸部癌および食道癌を対象に検査を実施したが、さらに対象を広げて検査件数の増加を図りたい。また、治療前と20Gy時点での低酸素領域への線量増加治療計画プランを作成し、線量体積ヒストグラムでの比較を通じて、この照射法の臨床的安全性あるいは問題点を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主としてデータ集積にあたり、学会発表旅費が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には研究データがまとまり米国放射線腫瘍学会など海外学会の発表に使用する予定。
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